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高町なのは いつまでも教導官魂を忘れないエース・オブ・エース 都筑真紀 25歳になりましたが相変わらずななのはさんです。なにげに本編の笑顔担当だったりも。 第二部は日常系描写が増えるので、戦闘以外での出番が増えるかも? 緋賀ゆかり 25歳になったなのはさんです! 前シリーズ『魔法少女リリカルなのはStrikerS』時よりも大人の雰囲気を出したいと思って描いています。 スバル・ナカジマ トーマを優しく見守る姉貴分の防災士長 都筑真紀 トーマが大変なことになっていたりティアナが別現場だったりで4巻ではいろいろ心配と苦労の連続な防災士長。 第二部ではわりとあははと笑ってられる……かな? 緋賀ゆかり ドラマCD『StrikerS サウンドステージX』の奥田(泰弘)さんのスバルの絵から数年、 時を重ねたイメージで髪型を調整しています。 フェイト・T・ハラウオン なのはとのタッグ健在 強く美しき執務官 都筑真紀 相変わらずなのはさんのピンチにはちゃんと駆けつけます、フェイトさん25歳。 BJ時には髪型も変わって、すっかり大人の女性です。 緋賀ゆかり フェイトさんも25歳ということで落ち着いた雰囲気を出すために髪型がひとつ結びになっています。 八神はやて いまだ真意は謎に包まれた特務六課司令 都筑真紀 がんばるちびたぬ部隊長、25歳ですが身長はあまり伸びてません。 気苦労と不運続きな部隊長ですが、明るいみたい目指して頑張って欲しいところです。 緋賀ゆかり 前髪に分け目ができて左耳に髪の毛をかけて後ろ髪を流しています。 実は、『魔法少女リリカルなのはStrikerS』の時より少し痩せた、という設定になっているようです。
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レイジングハート バルディッシュ S2U レイジングハート(使用者:高町なのは)/インテリジェントデバイス スタンバイモード デバイスモード シューティングモード シーリングモード バルディッシュ(使用者:フェイト・テスタロッサ)/インテリジェントデバイス スタンバイフォーム デバイスフォーム サイズフォーム シーリングフォーム S2U(使用者:クロノ・ハラオウン)/ストレージデバイス
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スレ住人の皆様 ドラゴンボール系単発SS 288氏 ドラゴンボール×なのは 320氏 ドラゴンボール×なのは 其の二 375氏 リリカルなのはZ 376氏 無題(仮) 377氏 無題(仮) 410氏 無題(仮) 411氏 無題(仮) 二代目スレ123氏 無題(仮) 二代目スレ147氏 無題(仮) 二代目スレ149氏 無題(仮) 二代目スレ301氏 無題(仮) 三代目スレ446氏 もうひとつの無印なのは~天下分け目の超決戦なの 同氏 次回作 リリカルなのはZ 三代目スレ546氏 劇場版リリカルなのはZ とびっきりの最強対最強なの 同氏 劇場版リリカルなのはZ 復活のフュージョン!なのはとフェイト 同氏 劇場版リリカルなのはZ 龍拳爆発!なのはがやらねばだれがやる 同氏 劇場版リリカルなのはZ 次回策予告 四代目スレ6氏 単発ネタ 同氏 単発ネタ2 四代目スレ62氏 劇場版リリカルなのはZ~極限バトル!3大スーパー魔道師 四代目スレ130氏 劇場版リリカルなのはZ~激突!100億パワーの魔道師なの 四代目スレ278氏 もうひとつのなのは~魔道師襲来編、宇宙一の強戦士魔道師目覚める 四代目スレ362氏 ベジフェイト 五代目スレ160氏 なのは感動の?最終回「さらばなのは!また会う日まで」 八代目スレ69氏 新OPとそのアニメーション 八代目スレ316氏 ヴィヴィオが拉致された後の展開 同氏 17話のギンガのシーンで何があったか 八代目スレ481氏 かっこいいシグナム 八代目スレ553氏 あれ風ななのは次回予告 十一代目スレ131氏 宇宙一の強戦士サイヤ人目覚める~ミッドチルダが終わる日~ 十一代目スレ446氏 あれ風ななのは次回予告 十七代目スレ448氏 妄想ナンバーズの次回作での活躍 五十五代目スレ241氏 魔法少女リリカルなのは。超戦士は眠れない TOPページへ このページの先頭へ
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魔法少女リリカルなのはStrikerS 第4話 【ファースト・アラート】 スバル「見つけてもらえてめぐり合うことができた新しい居場所」 ティアナ「ここでもやっぱり、空を見上げて戦ってゆく日々」 スバル「憧れ続けた人がいて、大切な友達が一緒で、新しい出会いもあって、想いがいつか、この空に届くまで」 ティアナ「遠くて高い壁だって、心を決めて立ち向かう」 スバル「皆で、一緒に。…魔法少女リリカルなのはStrikerS…始まります」 なのは「じゃあ、今回の早朝訓練。ラスト一本。皆、まだ頑張れる?」 スバル・ティアナ・エリオ・キャロ「はい!!」 なのは「じゃあ、シュートイベーションをやるよ?私の攻撃を五分間。被弾なしで回避しきるか、 私にクリーンヒットを入れればクリア。誰か一人でも被弾したら最初からやり直しだよ。頑張っていこう!」 ティアナ「このボロボロ状態で、なのはさんの攻撃を五分間捌ききる自信ある?」 スバル「ない!」 エリオ「同じくです!」 ティアナ「じゃあ何とか一発入れよう」 キャロ「はいっ」 なのは「準備はオッケーだね?それじゃあ…レディ…ゴー!」 なのは「シルエット…。やるねティアナ」 キャロ「あの!かなり火力がついちゃうから!気をつけて!」 エリオ「大丈夫!スピードだけがとりえだから!」 なのは「さて、皆もチーム戦にだいぶ慣れてきたね」 スバル・ティアナ・エリオ・キャロ「ありがとうございます!」 なのは「ティアナの指揮も筋が通ってきたよ。指揮官訓練、受けてみる?」 ティアナ「い、いやぁ、あの。戦闘訓練だけでいっぱいいっぱいです」 スバル「あちゃ~。か~。しまった~。無茶させちゃった~」 なのは「オーバーヒートかな?後でメンテスタッフに見てもらおう?」 スバル「はい…」 なのは「ティアナのアンカーガンも結構厳しい?」 ティアナ「あ、はい。だましだましです」 なのは「皆…訓練にも慣れてきたし。そろそろ実戦用の新デバイスに切り替えかなぁ?」 スバル「新?」 ティアナ「デバイス?」 なのは「四人ともいい感じで慣れてきてるよ。いつ出動があっても大丈夫」 はやて「そうかぁ。それは頼もしいなぁ~」 スバル・ティアナ・エリオ・キャロ「えへへ…」 なのは「二人はどこかにおでかけ?」 フェイト「うん。ちょっと6番ポートまで」 はやて「教会本部でカリムと会談や。夕方には戻るよ」 フェイト「私は昼前には戻るから、お昼は皆で一緒に食べようか?」 スバル・ティアナ・エリオ・キャロ「はい!!」 フェイト「聖王教会騎士団の魔道騎士で管理局本局の理事官。カリム・グラシアさんか。 私はお会いしたことないんだけど」 はやて「あ~、そうやったね」 フェイト「うん。はやてはいつから?」 はやて「う~ん。私が教会騎士団の仕事で派遣に呼ばれた時でリィンが生まれたばっかの時のはずやから…… 八年ぐらい前かなぁ?」 フェイト「そっか」 はやて「カリムと私は、信じてるものも立場もやるべきことも全然ちゃうんやけど、 今回は二人の目的が一致したから…。そもそも、六課の立ち上げ。 実質的な部分をやってくれたんはほとんどカリムなんよ?」 フェイト「そうなんだ…」 はやて「おかげであたしのほうは人材集めのほうに集中できた」 フェイト「信頼できる上司って感じ?」 はやて「う~ん。仕事や能力は凄いんやけど、あんまり上司って感じはせぇへんなぁ。 どっちかっていうと、お姉ちゃん。って感じや」 フェイト「ふふふっ、そっか」 はやて「まぁ、レリック事件がひと段落したらちゃんと紹介するよ。きっと気が合うよ?フェイトちゃんもなのはちゃんも」 フェイト「うん。楽しみにしてる」 キャロ「えっと…。スバルさんのローラーブーツと、ティアさんの銃って、ご自分で組まれたんですよね?」 スバル「うん。そうだよ」 ティアナ「訓練校でも前の部隊でも支給品って杖しかなかったのよ」 スバル「私は魔法がベルカ式な上に戦闘スタイルがあんなのだし。ティアもカートリッジシステムを使いたいからって」 ティアナ「で、そうなると。自分で作るしかないのよ。 訓練校じゃオリジナルデバイス持ちなんていなかったから目立っちゃってね」 キャロ「あ、もしかしてそれでスバルさんとティアさんお友達になったんですか?」 ティアナ「腐れ縁と私の苦悩の始まりだと言って」 スバル「えへへへへっ!」 はやて「これガジェット…。新型?」 カリム「今までの「Ⅰ型」以外に新しいのが二種類。戦闘性能はまだ不明だけど、これ」 カリム「「Ⅲ型」はわりと大型ね。本局にはまだ正式報告はしてないわ。 監査役のクロノ提督にはさわりだけお伝えしたんだけど…」 カリム「一昨日づけでミッドチルダに運び込まれた不審貨物」 はやて「レリック…やね」 カリム「その可能性が高いわ。『Ⅱ型』と『Ⅲ型』が発見されたのも昨日からだし」 はやて「ガジェットたちがレリックを見つけるまでの予想時間は?」 カリム「調査では、早ければ今日明日」 はやて「…せやけど、おかしいなぁ。レリックが出てくるのがちょお早いような…」 カリム「だから、会って話したかったの。これをどう判断すべきか、どう動くべきか」 はやて「……」 カリム「レリック事件も、その後に起こるはずの事件も、対処を失敗するわけには、いかないもの」 シャーリー「まず、その子達みんな、何段階かに分けて出力リミッターをかけてるのね。 一番最初の段階だとそんなにビックリするようなパワーがでるわけじゃないから、 まずはそれで扱いを覚えていって」 なのは「で、各自が今の質力を扱いきれるようになったら、私やフェイト隊長、リインやシャーリーの判断で解除してくから」 リインフォースⅡ「ちょうど、一緒にレベルアップしていくような感じですね」 ティアナ「あ、出力リミッターというと…なのはさんたちにもかかっていますよね?」 なのは「あぁ…私たちはデバイスだけじゃなくて本人にもだけどね」 スバル・ティアナ・エリオ・キャロ「えぇ?」 エリオ「リミッターがですか?」 なのは「能力限定って言ってね。うちの隊長と副隊長は皆だよ。私とフェイト隊長、シグナム副隊長とヴィータ副隊長」 リインフォースⅡ「はやてちゃんもですね」 なのは「うん」 シャーリー「ほら、部隊ごとに保有できる魔道師ランクの総計規模って決まってるじゃない」 スバル「あはっ…そ、そうですよね」 リインフォースⅡ「一つの部隊で沢山の優秀な魔道師を保有したい場合は、 そこに上手く収まるよう魔力の出力リミッターをかけるですよ」 シャーリー「まぁ、裏技っちゃあ裏技なんだけどね」 なのは「うちの場合だと、はやて部隊長が4ランクダウンで、隊長たちはだいたい2ランクダウンかな?」 ティアナ「4つ!八神部隊長ってSSランクのはずだから」 エリオ「Aランクまで落としてるんですか?」 リインフォースⅡ「はやてちゃんも色々苦労してるですぅ」 スバル「なのはさんは…?」 なのは「私は元々S+だったから2.5ランクダウンでAA。だからもうすぐ、一人で皆の相手をするのは辛くなってくるかなー」 スバル「……ぁ」 リインフォースⅡ「隊長さんたちははやてちゃんの、はやてちゃんは直接の上司のカリムさんか部隊の監査役クロノ提督の 許可がないと、リミッター解除はできないですし…。許可はめったなことでは出せないそうです」 エリオ「…そうだったんですね」 グリフィス「教会本部から出動要請です!」 はやて「なのは隊長、フェイト隊長、グリフィス君!こちらはやて」 なのは「うん」 フェイト「状況は?」 はやて「教会騎士団の調査部で追ってたレリックらしきものが見つかった。 場所はエーリム山岳丘陵地区。対象は山岳リニアレールで移動中」 フェイト「移動中って!」 はやて「うん」 なのは「まさか」 はやて「そのまさかや」 はやて「内部に侵入したガジェットのせいで車両の制御が奪われてる。 リニアレール車内のガジェットは最低でも30体。大型や飛行型の未確認タイプも出てるかもしれへん。 いきなりハードな初出動や。なのはちゃん、フェイトちゃん、行けるか?」 フェイト「私はいつでも」 なのは「私も」 はやて「スバル、ティアナ、エリオ、キャロ!皆もオッケーか?」 スバル・ティアナ・エリオ・キャロ「はい!!」 そしてスバルよ。隊長より前に出ちゃいかんだろ(右下三段目の画像) なのは「危ないときは私やフェイト隊長、リィンがちゃんとフォローするから。 おっかなびっくりじゃなくて思いっきりやってみよう!」 スバル・ティアナ・エリオ・キャロ「はいっ!!」 次回予告 キャロ「初めての出動。初めての実戦。胸の奥の小さな不安」 エリオ「受け継いだ思いと新たな力。前に向かってまっすぐに!」 キャロ「次回、魔法少女リリカルなのはStrikerS、第5話」 エリオ「星と雷」 キャロ&エリオ「Take off!」
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魔法少女リリカルなのはStrikerS 第10話【機動六課のある休日(前編)】 フェイト「過去の痛みと…譲れないプライドと、失敗と」 なのは「躓いてしまった小さな翼たちは、だけどちゃんと自分で立ち上がった」 フェイト「見守ってるから。失敗や迷いも全部…明日へ繋げていけるように」 なのは「躓きも後悔も、いつか宝物にできるように」 フェイト「全力で進んでいく毎日に、時々は、安らぎを」 なのは「たまにはのんびり…一休み」 フェイト「魔法少女リリカルなのはStrikerS」 なのは「始まります」 スバル「前略、ギン姉へ。この間のちょっとした事件からもう二週間。ティアはもうすっかり、いつものティアに戻りました。 それに、この間の事件がきっかけにエリオやキャロたちとも色々深い話ができるようになって、 何だか嬉しかったりもします」 なのは「はい。今朝の訓練と模擬戦も無事終了。お疲れ様! でね、実は何気に今日の模擬戦が第2段階クリアの見極めテストだったんだけど」 スバル・ティアナ・エリオ・キャロ「えっ!?」 なのは「どうでした?」 フェイト「合格」 スバル・ティア「はやっ!!」 ヴィータ「ま、こんだけみっちりやって、問題あるようなら大変だってこった」 なのは「私も皆良い線いってると思うし、じゃあ、これにて2段階終了~!」 フェイト「デバイスリミッターも1段解除するから…後でシャーリーのところにいってきてね」 ヴィータ「明日からはセカンドモードを基本形にして訓練するからな~」 なのは「今日は私たちも、隊舎で待機する予定だし」 フェイト「皆、入隊日からずっと訓練漬けだったしね」 ヴィータ「ま、そんなわけで」 なのは「今日は皆、一日お休みです」 アナウンサー「当日は、首都防衛隊の隊長、レジアス・ゲイズ中将による、 管理局の防衛思想に関しての表明も行われました」 レジアス「魔法と技術の進歩と進化。素晴らしいものではあるが、しかし!それがゆえに我々を襲う危機や災害も、 10年前と比べ物にならないほど危険度を増している!兵器運営の強化は進化する世界の平和を守るためである!!」 首都防衛の手は未だ足りん。非常戦力においても我々の要請さえ通りさえすれば、地上の犯罪も発生率20%。 検挙率においては35%以上の増加を初年度から見込むことができる!」 ヴィータ「このオッサンはまだこんなこと言ってんのな」 シグナム「レジアス中将は古くから武闘派だからな」 なのは「あ、ミゼット提督」 ヴィータ「ミゼットばあちゃん?」 フェイト「あー、キール元帥とフィルス相談役もご一緒なんだ」 はやて「伝説の3提督、揃い踏みやね」 ヴィータ「でも、こうしてみると…普通の老人会だ」 フェイト「もう、駄目だよ、ヴィータ。偉大な方たちなんだよ?」 なのは「うん、管理局の黎明期から今までの形に整えた功労者さんたちだもんね」 ヴィータ「ま、あたしは好きだぞ。このばあちゃんたち」 シグナム「護衛任務を受け持ったことがあってな。ミゼット提督は主はやてやヴィータたちがお気に入りのようだ」 なのは「ああ~、そっかぁ」 フェイト「なるほど」 ヴァイス「おまえ、今まではシングルでもチームでもコンビでも、動きが全部おんなじだったけどよ。 最近はだいぶ、臨機応変になってきてるように見えるぜ。センターらしい動きになってきたんじゃないか?」 ティアナ「皆さんのご指導のおかげで…」 ティアナ「あの…これ、聞いちゃいけないことだったら申し訳ないんですけど…」 ヴァイス「んあ?」 ティアナ「ヴァイス陸曹って、魔道師経験ありますよね?」 ヴァイス「…まぁ、俺は武装隊の出だからなぁ。ど新人相手に説教くれられる程度にはよ」 フェイト「ハンカチ持ったね。IDカード忘れてない?」 エリオ「えっと…大丈夫です」 フェイト「あ、お小遣いは足りてる?もし足りなくなると大変だから…」 エリオ「あ、あの、フェイトさん!あの、その僕もちゃんとお給料をいただいてますから」 フェイト「あ…そっか」 エリオ「大丈夫です!ありがとうございます!」 フェイト「とりあえず、エリオは男の子だし…キャロより二ヶ月年上なんだから、ちゃんとエスコートしてあげるんだよ?」 エリオ「あ、はい!」 なのは「じゃあ、転ばないようにね」 ティアナ「大丈夫です!前の部隊にいた時は、ほとんど毎日乗ってましたから」 スバル「ティア、運転上手いんです」 なのは「そう」 スバル「あ、お土産買ってきますね!クッキーとか」 なのは「嬉しいけど、気にしなくていいから。二人で楽しく遊んできなね」 ティアナ「はい!」 スバル「いってきまーす!」 なのは「あ、ライトニング隊も一緒にお出かけ?」 エリオ&キャロ「いってきます!」 なのは「はい、気をつけて」 フェイト「あんまり遅くならうちに帰るんだよ?夜の街は危ないからね」 エリオ&キャロ「はい!」 フェイト「外回りですか?」 シグナム「ああ。108部隊と聖王教会にな」 ヴィータ「ナカジマ三佐が合同捜査本部を作ってくれるんだってさ。その辺の打ち合わせ」 なのは「ヴィータちゃんも?」 ヴィータ「あたしは向こうの魔道師の戦技指導。全く、教官資格なんて取るもんじゃねぇなぁ」 なのは「にゃはははっ」 フェイト「捜査回りのことなら私も行ったほうが…」 シグナム「準備はこちらの仕事だ。おまえは指揮官で私はおまえの副官なんだぞ」 フェイト「う…ありがとうございます。…で、いいんでしょうか?」 シグナム「好きにしろ」 リイン「最初のリミッター解除、無事に済んでよかったですね~」 シャーリー「はぁい。明日からは四機の調整で慌しくなりますし、今のうちに、なのはさんとレイジングハートさんの限定解除モード、エクシードモードの最終調整も、しておきたいところですね」 リィン「バルデッシュのザンバーもですね」 シャーリー「あー、忙しいですね~。楽しいですね~!」 ここで、シャーリーがリィンに完全チェックを提案。 シャーリー「最近は、どなたともユニゾンしてないですよね?」 リイン「ですね~。はやてちゃんはもちろんシグナムもヴィータちゃんも、私を使うほどの状況にはならないですし」 シャーリー「それ自体はいいことなんですけどね」 リイン「でも、いざというときに働けなくては、祝福の風、リィンフォースの名が泣きますから」 ティアナ「天気もいいし、絶好のツーリング日和ね」 スバル「うん。このままず~と走っていきたいね」 ティアナ「予定変更してもいいけど、今日は街で遊ぶんでしょ?」 スバル「へへ。とりあえず街に出て、アイス食べてから考えよう~」 スバルはどこへ行ってもアイスのことしか考えてないのかとww そして、一方雷組みは――。 エリオ「えっと、シャーリーさんが作ってくれた今日のプランは…」 キャロ「うん」 エリオ「まずはレールウェーでサードアヴィニュームを出て、市街地を二人で散歩。 ウィンドウショッピングや会話等を楽しんで」 キャロ「食事はなるべく雰囲気が良くて会話の弾みそうな場所で」 エリオ・キャロ「?」 はやて「メンテナンスチェックとかしてたん?」 リイン「はいです!私と蒼天の書のフルチェック!」 はやて「そぉか」 リイン「はやてちゃんのシュベルトクロイツと夜天の書も、シャーリーが後で受け取りにくるそうですよ」 はやて「うん。了解や」 キャロ「初めて遊園地に連れて行ってもらったときは、凄く楽しくて、楽しすぎて。 だけど、日がくれて楽しい時間が終わっていっちゃうのが悲しくて。それでちょっと泣いちゃって」 エリオ「うん。なんだかよく分かる。前日は楽しくて眠れなくて、遊び終わった日はずっと寂しくて」 キャロ「うん!そうそう」 エリオ「今なら分かるけど、フェイトさん、凄く忙しいのに、その合間で面倒見ててくれたんだなって」 キャロ「うん」 ティアナ「そっちはどんな感じ?」 エリオ「えっと、予定通り公園で散歩して、これからデパートを見て回って…な感じです」 キャロ「その後、食事して映画見て、夕方には海岸線の夕焼けを眺めるっていうプランを作って貰ってますので」 ティア・スバル「はぁ??」 エリオ「ちゃんと順番にクリアしていきます」 ティア「クリアって…あの子達は…」 スバル「まぁ、健全だぁ」 ギンガ「これは…生体ポット!?」 スカリエッティ「破壊したのは局の魔道師か?それとも、当たりを引いたか?」 ウーノ「確定はできませんが、どうやら後者のようです」 スカリエッティ「素晴らしい。さっそく追跡をかけるとしよう」 ウーノ「ドローンの出撃は状況を見てからにしましょう。妹たちの中から、適任者を選んで出します」 スカリ「ああ。それじゃ、愛すべき友人にも手を貸してもらうとしよう」 キャロ「こちら、ライトニング4。緊急事態につき、現場状況を報告します。サードアヴィニュームF23の路地裏にて、 レリックと思しきケースを発見。ケースを持っていたらしい小さな女の子が一人」 エリオ「女の子は、意識不明です」 キャロ「指示をお願いします!」 なのは「スバル、ティアナ、ごめん。お休みは一旦中断」 スバル「はい!」 ティアナ「大丈夫です!」 フェイト「救急の手配はこっちでする。二人はそのまま、その子とケースを保護。応急手当てをしてあげて」 キャロ・エリオ「はい!」 はやて「全員待機態勢。席を外してる子たちは配置に戻ってな!」 シャーリー「はい!」 はやて「安全確実に保護するよ。レリックもその女の子もや」 シャーリー・リイン「了解!」 次回予告 はやて「レリックを運んできた少女。動き始めた事件。空と陸、それぞれの戦い。 次回魔法少女リリカルなのはStrikerS第11話、機動六課のある休日後編。私も空に…Take off!」
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笑顔で再会 懐かしい友達―― 聖王教会本部 13 45 ウェンディ「いよーっス。オットー、ディード」 ディエチ「久し振り」 ディード「ウェンディ姉様、ディエチ姉様」 オットー「二人ともごぶさた」 ディード「他の皆さんは?」 ディエチ「チンク姉は騎士カリムとシスターシャッハんとこ。なんかお話だって」 「ヴィヴィオとノーヴェはイクスのお見舞い」 ウェンディ「イクス元気っスか?」 オットー「健康状態には異常なし。静かにお休みだよ」 ディード「陛下やスバルさんもよくお見舞いに来て下さいますし。きっと楽しい夢を見ておいでなのかと」 ヴィヴィオ「ごきげんようイクス。――お加減良さそうだね?」 なかよしトリオ 夏モード☆ Memory;03☆「ストライクアーツ」 同時刻 教会内 カリム・グラシア執務室 カリム「お話って言うのは……例の傷害事件のことよね?」 チンク「ええ、我ながら要らぬ心配かとは思ったのですが。 件の格闘戦技の実力者を狙う襲撃犯。彼女が自称している『覇王』イングヴァルトと言えば――」 カリム「ベルカ戦乱期…諸王時代の王の名ですね」 チンク「はい」 「時代は異なりますがこちらで保護されているイクスヴェリア陛下やヴィヴィオの母体(オリジナル)である 『最後のゆりかごの聖王』オリヴィエ聖王女殿下とも無縁ではありません」 カリム「ヴィヴィオやイクスに危険が及ぶ可能性が?」 チンク「無くないかと」 「聖王家のオリヴィエ聖王女。シュトゥラの覇王イングヴァルト。ガレアの冥王イクスヴェリア。 いずれも優れた『王』達でしたから――ああ、もちろん。かつての王達と今の二人は別人ではあるのですが」 カリム「ええ、それを理解しない者もいるということですよね」 シャッハ「とはいえ『覇王イングヴァルト』は物語にも現れる英傑です。単なる喧嘩好きが気分で名乗っている可能性も大きいですよ」 チンク「――ですね」 カリム「でも犯人が捕まるまでイクスの警戒は強化するわ。セインについてもらいましょう ヴィヴィオについては……」 チンク「それはこちらで。私と妹たちがそれとなく」 ヴィヴィオ「みんなごきげんよう~♪」 オットー「ああこれは陛下…とノーヴェ」 ディード「陛下、イクスのお見舞いはもう?」 ヴィヴィオ「うんディード。いっぱい話したよ」 ノーヴェ「あたしらはもう戻るけどおまえらは?」 ウェンディ「あーあたしも」 ディエチ「私はもう少し」 オットー「陛下よろしければこれを。自信作のビスケットです」 ヴィヴィオ「わ♪ありがとオットー♪」 セイン「んじゃ、あたしは3人を送ってくるなー。その間はサボれる」 ノーヴェ「しかしいいのかヴィヴィオ。双子からの陛下呼ばわりは」 ヴィヴィオ「え?」 ノーヴェ「前は「もーっ陛下って言うのは禁止――っ」……とか言ってたろ」 ヴィヴィオ「あー」 「まあ、もう慣れちゃったし。あれも二人なりの敬意と好意の表現だと思うし」 ノーヴぇ「あいつらなんかズレてっからなあ」 セイン「この後はいつものアレか。ん?ウェンディもやるんだっけ?」 ウェンディ「ま、二人にお付き合いっス」 ミッドチルダ 中央市街地 リオ「あ!」 ヴィヴィオ「リオ!コロナ!おまたせー!」 コロナ「こんにちわー」 ヴィヴィオ「リオは二人と初対面だよね?」 リオ「うん」 リオ「はじめまして!去年の学期末にヴィヴィオさんとお友達になりました。リオ・ウェズリーです!」 ノーヴェ「ああノーヴェ・ナカジマと」 ウェンディ「その妹のウェンディっス♪」 コロナ「ウェンディさんはヴィヴィオのお友達で、ノーヴェさんは私たちの先生!」 ウェンディ「友だちー♪」 ノーヴェ「はなせって!」 ウェンディ「よ、お師匠様!」 ノーヴェ「コロナ。先生じゃないっつーの!」 コロナ「先生だよねー?」 ヴィヴィオ「教えてもらってるもん」 リオ「先生って伺っています!」 ウェンディ「ほら(ハートマーク)」 ノーヴェ「うっせ」 中央第4区 公民館 ストライクアーツ練習場(トレーニングスペース) リオ「でも、やっぱ以外~!ヴィヴィオもコロナも文系のイメージだったんだけどなぁ」 「初めて会ったのも無限書庫だったし」 ヴィヴィオ「文系だけどこっちも好きなの」 コロナ「私は全然、初心者(エクササイズ)レベルだしね」 リオ「ほんとー?」 ノーヴぇ「さあ、いくぞー」 ヴィヴィオ・コロナ・リオ「はーいっ!」 ウェンディ「へ――!なかなかいっちょまえっスねぇ」 ノーヴェ「だろ?」 ストライクアーツはミッドチルダで最も競技人口の多い格闘技であり 広義では「打撃による徒手格闘技術」の総称でもある リオ「でもヴィヴィオ、勉強も運動もなんでもできてすごいよねぇー」 ヴィヴィオ「ぜーんぜん!まだなんにもできないよ。自分が何をしたいのか。何ができるのかもよく分からないし。 だから今はいろいろやってみてるの」 リオ「そっか」 ヴィヴィオ「リオとコロナといろんな事いっしょにできたら嬉しいな」 リオ「いいね!一緒にやっていこう!」 ノーヴェ「さてヴィヴィオ、ぼちぼちやっか?」 ヴィヴィオ「うん!」 「さー出番だよクリス!服はトレーニングモードでね」 「セイクリッドハート!セットアップ!」 ノーヴェ「すみません。ここ使わせてもらいまーす」 ヴィヴィオ「失礼しまーす」 リオ「なんか二人とも注目されてない?」 コロナ「二人の組手凄いからねー。リオもちょっとびっくりするよ」 ヴィヴィオ「いくよノーヴェ」 ノーヴェ「おうよ!」 ウェンディ「二人ともやるもんっスなぁ」 コロナ「はい」 ヴィヴィオ「今日も楽しかったねー」 リオ「てゆーか、びっくりの連続だよー」 ノーヴェ「悪ィ、チビ達送ってってやってくれるか?」 ウェンディ「あ、了解っス。なんかご用事?」 ノーヴェ「いや救助隊。装備調整だって」「じゃ、またな」 ヴィヴィオ・コロナ・リオ「おつかれさまでしたー!」 ヴィヴィオ「ただいまー」 なのは「おかえりーヴィヴィオ」 ヴィヴィオ「ママ、これからお風呂?」 なのは「うん。今フェイトママが入っているからその後にね。これはフェイトママのパジャマ」 ヴィヴィオ「ホント!?それじゃあ……」 シャーリー『フェイトさん、今日も会議と臨検お疲れ様でした。明日も早朝からで申し訳ないんですが』 フェイト「ん、大丈夫」 シャーリー『いつものところでお迎えにあがりますので』 フェイト「お願いね、シャーリー」 ヴィヴィオ「フェイトママ~♪一緒に入っていいー?」 フェイト「いいよーいらっしゃーい」 ヴィヴィオ「それじゃあ~……」 ヴィヴィオ・なのは「おじゃましまーす」 フェイト「な……なのはもッ!?」 なのは「ヴィヴィオが一緒がいいって」 ヴィヴィオ「フェイトママ、明日も早いんでしょ?一緒にいられる間は一緒にいようよー」 フェイト「――うん、そうだね」 ヴィヴィオ「(ハートマーク)」 なのは「フェイトちゃん、久しぶりに髪の毛洗ってあげようか?」 ヴィヴィオ「あー!わたしもー!」 ヴィヴィオ「それでクリス、みんなに大人気(ハートマーク)かわいいって!」 フェイト「ほんと?みんなクリスの正式名称(セイクリッドハート)については何か言ってた?」 ヴィヴィオ「やっぱりねーとか、いい名前だねって」 なのは「なーに、二人でナイショ話!」 ヴィヴィオ「やーん」 「あ…そういえばノーヴェ達が今度ママたちにお礼したいって、こないだ本局を案内してもらったお礼だって」 なのは「なんだそんなこと。気にしないでって言っといて。でもほんと、ノーヴェ達もまっすぐ育ってくれてるよね」 フェイト「うん……ほんと」 イングヴァルト「ストライクアーツ有段者、ノーヴェ・ナカジマさんとお見受けします。 あなたにいくつか伺いたい事と確かめさせていただきたい事が」 激突!天に覇王!!地にノーヴェ!!! 高町ヴィヴィオ St.ヒルデ魔法学院初等科4年生の女の子。その正体は、かつて世界を統治したという「聖王」のクローン体。 スカリエッティに道具として利用された過去をもつが、今は二人のママに見守られて元気に育っている。 ヴィヴィオ変身後 ヴィヴィオが専用の魔導デバイス、「セイクリッド・ハート」を起動させて変身した姿。 かつてなのはを苦しめた「聖王モード」と似た格好だが、これは魔法の使用や武術の練習をしやすくするための変身である。 アインハルト・ストラトス St.ヒルデ魔法学院中等部の生徒。ヴィヴィオと同じ、瞳の虹彩異色がみられる。 本編にはいまだ未登場の謎多き少女だが、ヴィヴィオとの出会いはいつ訪れるのか……? コロナ・ティミル 立ち振る舞いがとっても優雅な、礼儀正しいお嬢様。ヴィヴィオとは一年のころからの親友で、 リオともすぐに打ち解け、なかよしトリオを結成した。キャンディ型の髪留めがお気に入りのアイテム。 リオ・ウェズリー 明るくてノリのいいヴィヴィオのクラスメイト。4年生になる少し前に知り合ったばかりなのに、 ヴィヴィオやコロナとはすでに大親友。身体を動かすのが大好きな元気娘。自分用のインテリ型デバイスをもつ。 高町なのは かつて「空のエース」と呼ばれた時空管理局の教導官。9歳のときに魔導デバイス「レイジングハート」と出会って以来、 数々の事件を乗り越えて成長してきた。今はヴィヴィオの母親として、静かな毎日を送る。 フェイト・T・ハラオウン 時空管理局の執務官。ケタ違いのスピードを生かした近接戦を得意とする。 自らの生まれもあって不幸な境遇の子供に思いやりが深く、 エリオやキャロの保護責任者や、ヴィヴィオの後見人を務めている。 八神はやて 時空管理局の特別捜査官。魔導師としての能力はなのはやフェイトを上回る。少女時代になのは達に救われて以来、 機動6課の設立など、多くの人を救うために自分の力を生かそうと尽力し続けてきた。 ヴィータ 「鉄槌の騎士」の異名をもつ、はやての守護騎士のひとり。ぶっきらぼうな性格だが根は素直で、 機動6課では戦闘教官も務めた。ハンマー状のデバイス「グラーフアイゼン」による超破壊力の攻撃魔法が得意。 シグナム まじめで思いやりのある守護騎士たちのリーダー。フェイトとは互いに実力を認め合う友人で、機動6課時代は副官として彼女を支えた。 愛剣「レヴァンティン」を駆使しての近接戦闘では、敵なしの強さを誇る。 ティアナ・ランスター 訓練校時代からのスバルの親友。執務官を一途にめざす、負けず嫌いのしっかり者。 幻術魔法と銃型デバイスを生かした中距離戦を得意とする魔導師で、長年続けてきたスバルとのコンビワークは一級品。 スバル・ナカジマ ローラーブーツとナックルを駆使した格闘技法で戦う陸戦魔導師。幼いころに命を救ってくれたなのはの姿に憧れ、 機動6課時代には彼女から勇気の意味を学ぶ。ボーイッシュな外見に反してふだんは内気な性格。 キャロ・ル・ルシエ 龍を召喚し使役する能力を持つ魔導師。少数民族の生まれで。集落を離れてしまい各地を転々としていたところをフェイトに保護された。 現在はパートナーであるエリオとともに自然保護隊員をしている。 エリオ・モンディアル 槍型デバイス「ストラーダ」を操る優しい少年期氏。不遇の少年時代を送り、荒みきっていたところをフェイトに救われ、 彼女のことを本当の親のように慕っている。現在は辺境で自然保護隊員として活躍中。 チンク・ナカジマ ナカジマ家の次女で、本ナンバーズの「5」。潜入任務と破壊工作を得意とする。昔の戦いで右目を負傷したため、 黒い眼帯をつけている。面倒見のいい性格で、今は次女として奔放な妹たちをまとめている。 ディエチ・ナカジマ ナカジマ家の3女で、元ナンバーズの「10」。ナンバーズ時代は主に狙撃・砲撃による後方支援を担当。 従順に任務をこなしながらも、スカリエッティのやり方には疑問をもっていた。 ノーヴェ・ナカジマ 元ナンバーズの「9」。短気で直情的な性格。見た目や戦い方がスバルとうり二つ。ナカジマ家の5女となった今は、 アルバイトをしながら訓練校などで格闘技を学んでいる。ヴィヴィオとも仲良し。 ウェンディ・ナカジマ ナカジマ家の末っ子で元ナンバーズの「11」。元気で甘えんぼう。多種な機能を持つ巨大な楯「ライディングボード」を駆使して、 ノーヴェとともに前線任務を担当していた。語尾に「ッス」とつくのが特徴。 魔法少女たちの熱きバトルアクションや、緻密に設定された壮大な世界観で多くのファンをつかんできた 大人気シリーズ「魔法少女リリカルなのは」。本誌でも最新シリーズとなる「魔法少女リリカルなのはVivid」 が好評連載中の本作だが、今回はそんな作品の魅力がたっぷり詰まった、表も裏も楽しめる ヒロインコレクションポスターをみんなにお届けだ! 第1期で激しい対決を経て、真の友情を築いたなのはとフェイト。 第2期で悲しい事件を乗り越え、本当の絆を確かめ合ったはやてと騎士たち。 第3期でなのはを継ぐ新たな世代として成長してきたスバルたち。 そしてなのはとフェイトの娘である新たな主人公ヴィヴィオ……。 そんな歴代の魔法少女たちの魅力をしっかり再確認してくれ!
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ミッドチルダ北部、ベルカ自治領。 豊かな自然に囲まれ、活気と笑い声の絶えぬその街が、燃えていた。 空を埋め尽くす異形の敵――特定の人間やロストロギアを狙って現れるという質量兵器、謎の侵略者アンチスパイラルの尖兵、ムガン。 聖王教会は直ちに騎士団を出撃させたが、限りある人員での敵の撃退と住民の避難誘導の両立は困難を極め、結局どちらも進まぬまま時間と被害だけが徒に過ぎていった。 「くっ……!」 減らない敵、広がり続ける戦火に、聖王教会の修道女、シャッハ・ヌエラは歯噛みした。 何故このような辺境にムガンが……頭の中を埋め尽くす疑問は、しかし戦場と化したこの場では何の意味も持たない。 大切なのは如何に敵を撃退するか、優先すべきは如何に住民の安全を確保するか。 今の自分達が必要としている言葉は「何故」ではなく「どうやって」なのである。 ムガン一体一体の強さ自体は教会騎士団の敵ではない。 厄介なのは破壊した後に起こる爆発、しかしそれも対処さえ間違わなければ大した脅威にはなり得ない。 だが、それが百も二百も集まって来られれば、当然ながら話は変わってくる。 飽和状態を遥かに超えた敵の物量に攻撃も守備も追い着かず、結果として味方の損害ばかりが増える一方だった。 両手の双剣型デバイスを握り直し、シャッハは空へ――敵陣へと斬り込んだ。 跳躍系魔法を得意とするシャッハにとって、距離や重力は意味を持たない。 十数mもの距離を文字通り一瞬で跳び越え、頭上を浮遊していたムガンをまず一体、斬り捨てる。 両断された一体目が爆発する前に手近な場所――それでも数十mは離れているが――を飛ぶ別のムガンに跳び移りデバイスを一閃、二体目を撃破。 足場として獲物として、敵から敵へと跳び移りながら、シャッハは双剣を振るい続けた。 しかしそれも焼け石に水――如何にシャッハが、騎士達がムガンを破壊したところで、空を覆う敵の軍勢は一向に減る気配を見せない。 劣勢だった、負け戦だった。 しかし退く訳にはいかない、諦めることは出来ない……守るべき人が、救うべき民がいる限り。 その時、 「ディバインバスター!!」 「サンダースマッシャー!!」 凛とした二つの声と共に、白銀の閃光と黄金の雷撃が空を貫いた。 直後、爆炎が空を赤く染め、轟く爆発音が全ての音を塗り潰す。 攻撃に射抜かれ、周囲に固まった仲間をも巻き込んだムガンの爆発、その連鎖である。 「騎士はやて……?」 炎に彩られた空の真ん中に浮かぶ二つの人影、その片割れ――六枚の翼を広げ漆黒の騎士甲冑を身に纏うその少女の名を、シャッハは思わず呟いていた。 「んー、やっぱミッド式はいまひとつ肌に合わんなぁ」 虫食いのように部分的に数を減らした敵の群れを眺めながら、はやてはのほほんとした口調でそうひとりごちる。 見様見真似で撃ってみた親友の十八番だが、威力はオリジナルの半分以下。 術式も魔力も違いは無い筈なのに、しかしその差は歴然……これはもう相性としか言いようが無い。 出力限定を掛かった今の状態ではこの程度が限界だろうか……砲撃でムガンの群れに開けた「穴」、フェイトによるものよりも小さなそれを眺めながら、はやては思う。 「しかし……「口は災いの元」って本当やね。ウチびっくりしたわ」 何かがある……カリムの待つ教会本部へ向かう車の中で、自分は確かにそう言った。 しかしそれはカリムが何か無理難題でも言い出すだろうという程度のものであって、まさか目的地自体が戦場になっているとは流石に想定外であった。 「結構な団体さんみたいやけど、どうするフェイトちゃん? 二回目の限定解除いってみよか?」 まるで緊張感のない、しかし普段よりも明らかに固い口調で、はやては隣を飛ぶフェイトに問う。 出力限定――時空管理局の規定する一部隊の保有戦力の上限により、機動六課の隊長陣の全員がデバイスと本人にリミッターを掛けられている。 フェイトの場合は2ランク落とされて現在A+、Aランクまで制限されたはやてよりは上であるが、それでも心許ないことに変わりは無い。 出力限定は、対象者よりも上位にある特定の人間の権限により、一時的に解除することが出来る。 なのはやフェイト、その他隊長級部隊員の場合ははやて、そしてはやて自身の場合は後見人のカリムと監査役のクロノが、それぞれ限定解除の権限を有している。 しかしフェイトは首を横に振り、格好つけるように右手のデバイスくるりと一回転させる。 「……このままで十分」 力強くそう言い切るフェイト、その言葉に偽りは無い。 あの敵の相手ならばこの四年間、嫌という程やらされてきた。 目測だが、残存するムガンはおよそ二百前後――出力限定を掛けられた身とはいえ、たかがその程度の数、今更自分の敵ではない。 愚問だったか……フェイトの返事にはやては首肯し、続いてシャッハへと視線を向ける 「シャッハ! 空の敵はフェイトちゃんに任せて、教会騎士団は住民の避難誘導や救助に集中して。ウチもそっちを手伝うから!」 聖王教会の騎士は精鋭揃い、それは認めよう。 では何故苦戦しているのか――簡単である、彼らはやり方を間違えているのだ。 戦い方を見た限り、どうやら騎士団の者達はムガンの相手は初めてらしい。 ムガンの最も効率的な駆除方法は、一箇所に集めたところに砲撃を叩き込み、自爆の連鎖を誘発して一気に殲滅することである。 しかし騎士達の採っていた行動は全くの真逆――ムガン一体一体を群れから引き離し、各個撃破するという非効率的なものだった。 爆発による周囲の被害への考慮、そして近接戦闘に特化したベルカ式魔法の特性を考えれば仕方のないことなのかも知れないが、そのような事情ははやてには関係が無い。 現時点で教会騎士とムガンとの相性は最悪――はやてにとって、必要な事実はそれだけで十分だった。 先方の矜持に付き合い無駄な被害の拡大を許容する程、はやては寛大でも愚鈍でもない。 そして自分自身の戦力としての価値も、はやては冷静に分析していた。 先程のディバインバスターの威力から判断して、出力制限の掛けられた今の自分の砲撃の評価は「あってもなくても大して変わらない」程度。 かといって自分本来の戦闘スタイルは広域殲滅型、下手に撃てば地上の街ごと消し飛ばしかねない。 どちらに転んでも役立たず……それがはやてが自分自身に下した評価だった。 以上のような思惑から、はやては敢えて自分を含めたほぼ全員を戦力外と切り捨て、無謀ではあるが一番確実な方法を選んだ。 形振り構っている暇は無い、自分達が手をこまねいている間に減っていくのは人の命なのだ。 はやての指示に、シャッハだけでなくその場の教会騎士全員が瞠目していた。 「騎士はやて……あの数の敵を、その人一人に押し付けるつもりですか!? 我々はただ指をくわえて見ていろと、そう仰りたいのですか!!」 自分達教会騎士団の全戦力を投入しても抗しきれなかった強敵を相手に、あのような小娘独りで何が出来るというのか。 無茶な特攻でも仕掛けて、結果犬死するのは目に見えている。 ……否、本当はシャッハにも解っていた――あの金の髪の魔導師が敵に後れを取ることは無い、はやての判断は正しいのだと。 自分達が手も足も出なかった敵の軍勢に、この二人はたったの一撃で驚くべき損害を与えてみせたのだから。 頭の中では理解は出来る、しかし心は納得出来ない。 何故ならはやての指示を了承してしまえば、同時に自分達教会騎士団は役立たずの無能者であると、間接的にではあるが認めてしまうことになるのだから。 認められない、断じて認めることなど出来ない。 糾弾するように叫ぶシャッハに、しかしはやては顔色一つ変えることなく、背中の翼を羽ばたかせながら地上へと舞い降りる――本当に自分は前線に出ないつもりらしい。 フェイトも周囲に魔力弾を生成し、金色の軌跡を描いてムガンの群れへと突入した。 「騎士はやて!!」 激昂したように声を荒げ、シャッハははやての胸倉を掴み上げた。 憤怒一色に染まるシャッハの顔を真っ直ぐに見つめ返し、はやては静かに口を開いた。 「勘違いしたらアカンよ、シャッハ。ウチの言ってるのは命令やのーて提案、今この状況でウチの出せる最良の選択肢を提示してるだけ……。 余所者のウチに騎士団を顎で使う権限は無い――従うかどうかはアンタら次第や。 でも、もしアンタらがこの街が好きやったら、騎士の誇りと街の皆を天秤に掛けて皆の命の方が重い思うんやったら、不本意やろーけどウチの言うことを聞いて……!」 どこまでも平静さを保った、しかしその実シャッハ以上の激情を押し殺した声音で、はやては目の前の騎士にそう語りかける。 漆黒の瞳の奥で、冷たい炎が燃えていた。 陳腐な矜持に拘る者達に憤っている、無力な自分自身に泣いている。 嗚呼……はやての胸倉を掴む手を離し、シャッハは観念したように項垂れた。 この人も自分達と同じなのだ――絶望に打ちのめされている、無力感に慟哭している。 ただ一つ、自分達と違うものは……この人は自分の無力を素直に認め、その上で自分に出来るやり方で、自分に出来る何かをやろうと足掻いていること。 たとえ自分を曲げてでも、希望を掴み取ろうとしていること。 「騎士はやて……貴女は、卑怯だ……!」 デバイスを握る両手を震わせ、血を吐くように悲痛な声でシャッハはそう口にする。 住民の命を引き合いに出されて、断れる筈などないではないか……。 「……分かりました。貴女のその提案、採用させて頂きます」 泣き顔のような笑みを浮かべてそう口にするシャッハ……その言葉は、戦場の騎士達全ての思いを代弁していた。 はやてもまた泣きそうな笑顔で首肯を返し、周囲から成り行きを見守る教会騎士達を見渡した。 「……皆、頑張っていこーか!」 そう呼びかけるはやてに、騎士達は迷いも乱れもなくこう応える――「応!!」と。 時空管理局の魔導師と聖王教会の騎士、信念も立場も役割も違う者達の道が、今、同じ思いの下で一つに交わった。 しかし結束するはやて達を嘲笑うように、その時、街の情景が――空間が突如ぐにゃりと歪んだ。 ひび割れた地面の底から這い出るように浮上する無数の小さな影――円盤状の頭部に、折り曲げた針金を束ねたような胴体、見覚えのある、しかし初めて見るシルエット。 「人間サイズの、ムガン……!?」 愕然と呟くはやてに反応したように、新たに出現した小型ムガンが一斉にビームを放った。 はやてとシャッハ、そして騎士達は一斉に散開し、雨のように撃ち込まれるビームをかわす。 「ミストルティン!!」 はやての呪文詠唱と共に中空に展開される魔方陣、その周囲に生成された七本の光の槍が、小型ムガンへと放たれる。 光の槍に貫かれ自爆する小型ムガン、その爆発力は上空でフェイトの相手取っている大型ムガンのそれに比べれば遥かに小さく、大きさ相応と言える。 小さくなっただけで、対処法は大型と同じ……攻防の結果からそう判断を下し、はやては大きく息を吸い込んだ。 「何やぁー! 小っこい見た目通り全然弱いやんかぁーっ!!」 周囲に散らばる騎士達を見渡し、はやては突然そう叫んだ。 その顔には無邪気な笑みすら浮かんでいる。 唖然、呆然……はやての突然の変貌に、教会騎士達は大口を開けて固まっていた。 「き、騎士はやて……?」 戦士の顔から一転し、まるで子供のようにはしゃぐはやてに、シャッハがおずおずと声を掛ける。 こいつ頭でも打ったのだろーか……心配の色を多分に含んだシャッハの呼びかけを無視して、はやてはデバイスの先端を手近な小型ムガンへと向ける。 はやての周囲に無数の魔力塊が生成され、 「なのはちゃん風なんちゃってミッド式魔法第二段――アクセルシューター!!」 気合いと共に射出された魔力弾が小型ムガンを撃ち抜き、破壊する。 「小っこくなって強さも半減なんて、何や明らかに間違っとるやろ? 雑魚キャラの進化逆走しとるんじゃないんかぁーっ!?」 周りの騎士達を煽るように、けしかけるように、はやては再び声高に叫ぶ。 空の敵はフェイトが抑えてくれている、地上の新しい敵は自分達が何とかしなければならない……そのためには教会騎士団の協力は何としてでも必要になる。 騎士団が役に立たないというのはあくまで上空の大型群相手の話、この大きさならば、たとえどれだけ数が増えようと気合いと根性次第でどうにでもなる。 無論、先程とは状況が変わった今ならば、騎士達は率先して小型ムガンの駆除に当たるだろう。 しかし大きさが違うとはいえ似たような形の敵に苦戦したのだ、小型ムガン相手に騎士達が萎縮してしまわないという保障はない。 トラウマが刻まれている可能性があるのだ。 極端に言えば、象程の大きさもある巨大なゴキブリに遭遇したとして、その後普通のゴキブリを見た時に人はどう反応するか……自分ならば即座に卒倒する自信がある。 これは微妙に意味が違うよーな……頭に浮かんだ例えに一瞬首を傾げるが、しかしこの場ではどうでも良いことであるとはやては思い直す。 小型ムガンは大型とは別物……そのイメージを騎士達に刷り込ませるために、自分は道化を演じていれば良い。 周りを見渡してみれば、早速はやての「刷り込み」作戦が効果を見せてきたのか、騎士達の表情は少し前とは明らかに違っていた。 絶望や恐怖の色が消え、気概と活力を取り戻している。 あと少し、もう一歩……己の計算通りに気迫を取り戻しつつある騎士達に最後の一押しを加えるべく、はやてはデバイスを構え直した。 景気良く一発デカいのを撃ってみようか……最後の発破掛けに使う呪文を慎重に吟味し、はやてが詠唱を始めたその時、 (――はやて!) 切羽詰まったようなフェイトの声が、突如はやての頭の中に飛び込んできた。 「……フェイトちゃん?」 念話によるフェイトからの緊急通信に詠唱を中断し、空を見上げたはやては、次の瞬間表情を凍りつかせた。 空を埋め尽くす大型ムガンの大群、はやてが地上に降りた時とは比べ物にならぬ程の量に、いつの間にか増殖している敵。 (ちょっとちょっとフェイトちゃん、何で減るどころか増えとるんよ!? しかもこんな洒落にならん数!!) 最初に自分達が砲撃を撃ち込んだ時の数倍の規模にまで膨れ上がったムガンの群れに、はやては念話越しに絶叫した。 (敵の増援……いきなり現れたの) 固い声音で返されたフェイトの返事、念話越しにフェイトの歯噛みする気配が伝わってくる。 上空に広がる絶望的な現実に、はやてのパフォーマンスに釘付けとなっていた教会騎士達も徐々に気付き始めていた。 拙い……愕然とした表情で空を見上げる騎士達に、はやては心の奥で舌打ちした。 ここで折れさせてはいけない、ここで諦めさせてはいけない。 折角ここまで盛り上げてきたのに、ここで絶望に呑まれる訳にはいかない。 気持ちで負けてしまったら、その時点で希望は潰えてしまうのだから……。 「機動六課部隊長八神はやての権限により、フェイト・T・ハラオウン隊長の出力限定を解除します!!」 まるで戦場全体に響かせるように、この場にいる騎士全員に聞かせるように、はやては高らかに宣言した。 同時にはやては上空で戦うフェイトに念話を送る。 (フェイトちゃん、今使える魔法の中で一番派手なモンを一発、盛大にぶち撒けてくれへん?) はやてからも不可解な要請に、フェイトは思わず眉を寄せた。 (え? それってどういう……) (えーから!) そう言って強引に切られた念話に首を傾げながらも、フェイトはデバイスを両手で握り直し、周囲を覆い尽くす大型ムガンの群れを見据える。 「フルドライブモード」 短く紡がれたフェイトの言葉と共に、バリアジャケットの外套部分が消え去り、デバイスが大剣型に変形する。 フルドライブモード――出力限定のために普段は封印されている、フェイトの限界突破形態である。 万が一の時の切り札の筈が、この二週間で二度も使うことになるとは……嘆息したくなる衝動を押し止めながら、フェイトは魔方陣を展開し、デバイスを振り上げる。 突然、空が暗くなった。 大型ムガンの群れに埋め尽くされた青空、その更に上空に厚い雲の蓋が嵌り、太陽を覆い隠しているのだ。 雲の奥で鳴り響く雷、蛇のようにうねる無数の光の軌跡が、フェイトの掲げたデバイスの刀身へと吸い込まれていく。 雷を吸収した魔力刃が激烈な輝きを放ち、太陽の消えた空を眩く染め上げる。 「プラズマザンバーブレイカー!!」 虚空を踏み締め、フェイトは気合いと共にデバイスを振り下ろした。 金色の光の奔流が空を突き抜け、まるで一つの生き物のように蠢くムガンの群れに大穴を開ける。 おお……動揺の声を上げる騎士達を一瞥し、はやては大仰に両腕を広げ、口を開いた。 「見たかぁ! 我ら時空管理局の誇るエース級魔導師の出鱈目さ!! 理不尽さ!! 我が機動六課にはあのフェイトちゃんレベルの猛者がもう五人! そして次点が一体と一匹!! かくゆーウチも本気出せばそいつらに負けへんで!! ウチら機動六課のお仕事はムガンの殲滅! つまり今言った五人と一体一匹が、もうすぐ皆纏めてここに大集合っちゅー訳や!! あと少しや! あと少しウチらが踏ん張れば、最強のご都合主義軍団が到着する!! そしたらあんなメカクラゲの千や二千、チャンチャンバラバラの瞬殺や!! ――だから皆、それまで頑張ろー!!」 演説を終え、はやては勿体ぶったようにゆっくりと両腕を下ろした。 次の瞬間、まるで地を揺るがすような騎士達の咆哮が戦場に轟いた。 溺れる者は藁をも掴む――絶望の波に呑まれた人間は、目の前に差し出された希望に飛びつかずにはいられない。 たとえそれがどんなに小さなものであっても、逆にどんなに荒唐無稽なものであっても。 これで暫くは大丈夫……希望を取り戻した騎士達を満足そうに眺め遣り、はやてはこれからの段取りを考え始める。 まずはシャッハを通じてカリムと連絡を取り、自分の出力限定を解除して貰う。 同時に機動六課に連絡、なのはと新人達を大至急こちらに向かわせる。 新人達の到着後はなのはの出力限定も解除、自分とフェイトとの三人で空の敵を一気に叩く。 大まかな流れを脳内で纏め上げ、はやては大きく深呼吸した。 大丈夫、自分ならばやれる……気合いを入れるように両手で頬を叩き、はやては顔を上げた。 周囲に散在する騎士達が、皆はやての顔を見つめている……行動開始の合図を待っているのだ。 いつから自分はこいつらの親玉になったのだろうか……絶対的な信頼と共に自分に向けられる騎士達の視線に、はやては照れたように頬を?いた。 越権行為で後で始末書確定だなーという後ろ向きな思考は取り敢えず心のゴミ箱に放り込み、はやては表情を引き締めた。 「皆……気合い入れていこーか!!」 えいえいおー……元気良く拳を天に突き上げるはやてに、騎士達は雄叫びで応えた。 (あのー、はやて? 凄く盛り上がってるところに水を差すようでとてもとても恐縮なんだけど……) 困ったような、物凄く困ったような声色で、フェイトが念話で話しかけてきた。 (――さっきグリフィスから連絡が入ったんだけど……なのは達はもう別件で出撃しちゃってるんだって) 唐突に聞かされたフェイトの爆弾発言に、はやての時間は凍りついた。 (……ごめんフェイトちゃん、何やウチ居眠りしとったみたいや。悪いけどもう一度言ってくれんかな?) ぎこちない口調でそう問いかけるはやてにフェイトは嘆息し、グリフィスから伝えられた内容を親切丁寧に話し始めた。 (ミッドチルダ東部の山岳地帯を運行するリニアレールが謎の魔導機械に襲われたって、管理局に通報が入ったのは発端。 その後ムガンまで現れたらしくて、本部は機動六課に出動を要請……ついさっき、なのはが新人をつれて出撃したんだって。 はやての通信機に幾ら掛けても繋がらないからって、私の方に回ってきたんだけど……) 今度こそ、はやての時間は止まった。 そう言えば演説中に何かがピコピコ鳴ってたよーなとか最初にムガン出現の連絡は入れたけどなのはちゃんたちが出張る必要なしと出撃突っぱねたんだったとか、 思い起こせば続々と出てくる若さ故の過ちという名の失態に思わず頭を抱えたくなるはやてだったが、全てはもう後の祭りである。 始末書やー首切りやーとゆーかウチら生きて帰れるんやろかーと、この世の終わりにように呻くはやての思念が、念話の回線越しにフェイトの頭の中に叩きつけられる。 (一応六課にはシャマルとザフィーラがいるし、リインも何故か残ってるみたいなんだけど……) ――輸送ヘリもなのは達運ぶのに使用中だから、人はいるけど足が無い……非情な現実に打ちのめされるはやてに、フェイトは追い討ちをかけるように報告を続ける。 そして……、 (つまり私達、絶対絶命ってことだね) これがトドメだった。 (う……) (う?) (うわぁああああああああああん! ウチの馬鹿馬鹿馬鹿あああああああああっ!!) 過酷過ぎる現実に理性が決壊したのか、子供のように泣き叫ぶはやて。 しかしその慟哭はあくまで念話越の中だけ――つまり妄想の範囲内――に収まり、現実のはやては何事もないかのように平然と騎士達を煽っている。 本音と建前がここまで乖離しているのも珍しいものだと妙なところで感心しながら、フェイトはムガン群へと視線を戻す。 機動六課は、なのは達は助けに来ない……ならば自分達で、何とかするしかない。 絶望的な戦いが、始まろうとしていた。 天元突破リリカルなのはSpiral 第8話「騎士はやて……貴女は、卑怯だ……!」(了) 戻る 目次へ 次へ
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新暦0075年5月13日、密輸ルートで運び込まれたロストロギア〝レリック〟をガジェットと呼ばれる魔導兵器が発見、輸送レールを襲撃するという事件が発生。 今回確認されたガジェットは三種類、いずれの機種もAMFを搭載していた。 件のリニアレールの周囲には数体のムガンも確認されたが、ガジェットとの関連は不明。 ムガン出現による出撃要請を受け、機動六課前線部隊が正式稼働後初の緊急出撃、隊員一同の活躍もあり事件は無事に解決。 同日、ベルカ自治領の市街地に大量のムガン出現を確認、別件で現場に偶然居合わせた八神はやて部隊長及びフェイト・T・ハラオウン隊長が迎撃活動に参加。 敵の物量に押され一時危機的状況に陥ったが、ロングアーチ管制班の搭乗する新型魔導兵器〝ガンメン〟の投入により戦局は好転、無事殲滅を完了。 戦闘終了後、刻印ナンバー44のレリック及びコアドリルを回収、両者は機械的に接続されており、今回のムガン大量発生の人為的事件性が指摘されている。 なお、今回確保した二つのレリック及びコアドリルは、現在中央のラボにて保管・調査中。 ――機動六課部隊長補佐、リインフォースⅡの勤務日誌より抜粋。 「……と、ここで綺麗に終わっとけば万々歳やったんやけどなー」 「ですー」 数日前の勤務日誌を読み返しながら、はやてとリインフォースⅡは揃って息を吐いた。 スバル達前線部隊の初陣は、確かに初任務としては上々の形で幕を下ろした。 併行して発生したベルカ自治区のムガン出現事件も、隊長格二人や聖王教会騎士団の奮闘、更に途中参戦したガンメン軍団の活躍により壊滅の危機は免れた。 新設部隊としては悪くない滑り出し、しかし問題が全く無い訳ではなかった。 鉄道会社や一般乗客による、車両の破壊や運航ダイヤの遅れによる各種損害への苦情や賠償請求。 ベルカ市街地での戦闘における情報伝達ミスによる被害の拡大や、八神部隊長の越権行為。 更に魔力資質の低い内勤職員の前線投入や、それによる質量兵器保有の疑惑等々、浮上した問題を挙げればきりが無い。 これらの問題に対し時空管理局地上本部は八神部隊長を緊急召喚、部隊の管理責任を追及した。 そして、その結果――、 「――降格してもーた」 あははははーと呑気に笑う部隊最高責任者に、なのは達は思わず嘆息を零した。 今回の失態へのペナルティとして、はやての一階級降格の他にガンメンのデータ提出と査察の受け入れ、そして近々開催される骨董品オークションの警備への人員派遣が通達された。 中々に手痛いペナルティではあるが、しかしこの程度の追及で済んだことは機動六課という組織としては寧ろ僥倖と言える。 充実した人員や潤沢な予算などの本局の各種優遇措置、それに聖王教会との関係など、余所から疎まれる要素には事欠かない。 最悪の場合、部隊解体という洒落にならない事態も十分あり得たのだ。 それなのにこの緊張感の無さ、こいつは事態の深刻さを解っているのだろーか……ジト目で睨む隊長陣一同に、はやて二等改め三等陸佐の笑顔が引き攣る。 「ま、まぁアレやな! 終わり良ければ全て良しと……」 「いや何も終わってねーだろ」 「はやてちゃん、実は何も考えてないでしょ?」 強引に話を終わらせようとするはやてにヴィータが容赦なくツッコミを入れ、なのはも疲れたように息を吐いた。 他の面々も二人と似たり寄ったりな表情を浮かべて呆れている。 なのはの右手には白い包帯が巻かれている、その下には列車奪還任務の際に負った傷が今でも生々しく残っている。 デバイスとはいえ刃物を素手で握るという無茶の代償は、消えない傷跡としてなのはの右手に深く刻み込まれた。 傷は深く、シャマル曰く一歩間違えていれば指や掌の神経を切断し、最悪の場合二度とデバイスを握れなくなっていた程だという。 ある意味管理局の広告塔とも言えるエースオブエースに致命傷一歩手前の傷を負わせたという事実も、なのはの上司であるはやてへの風当たりを強くしていた。 治療の際、なのはは魔法による負傷の完全治癒を拒否、自身への戒めとして傷跡を残すことを選んだ。 この右手の痛みが、生涯肌に残る醜い傷跡が、誓いを忘れ、間違えてしまった愚かな自分を思い出させてくれる……未だ傷の塞がらぬ右掌を、なのははぐっと握り込む。 握った拳の中を、鈍い痛みが電撃のように走った。 「ところで、前線部隊の訓練の方はどんな塩梅なんや?」 唐突に話題を変えたはやての問いに、なのはは一瞬反応が遅れた。 代わりに隣のヴィータが口を開く。 「順調も順調、怖ぇ位に快調だ……デバイスの第二形態のリミッター解除を急遽繰り上げようかって、なのはとマジ顔突き合わせて話し合わなきゃならねー程にな」 ヴィータの科白に、はやて達は唖然と目を見開いた。 スバル達の新型デバイスには幾重にもリミッターが組み込まれ、訓練の進度や成長の度合いによって順次解除していくという教導方針を採っている。 新人達の訓練開始から一ヶ月強、第二形態解放は時間の問題だとは思っていたが、どうやら四人の成長は自分達の予想を大きく超えていたらしい。 「……異常なまでの成長速度だな」 「そうね。これがロージェノムさんの言う〝螺旋力の覚醒〟だとしたら……あの子達が一体どこまで伸びるのか、空恐ろしくなるわ」 硬い表情で呟くシグナムに、シャマルも同意の声を漏らす。 「スバル達は強くなるよ」 二人の言葉に、なのははそう言って鈍痛の走る右拳を握り締めながら天井を見上げた。 教官というものも因果な役職だ……自分と空を隔てる冷たいコンクリートの塊を見上げながら、なのはは薄く自嘲する。 己の全てを教え授けようと意気込んで、厳しくも大切に丁寧に育ててきた筈の教え子達は、しかし気がつけば自分の手を離れて己の道を一人で歩き出している。 教導を始めて一ヶ月強の今の時点で、この科白は早過ぎるかもしれないが、それでもそう思わずにはいられなかった。 「わたし達を超えて、限界という天井すらも突き抜けて、どこまでも……」 天井を見上げたまま淋しそうに呟くなのはを、はやて達は無言で見詰めていた。 轟、轟轟――雲の壁を突き破り、蒼穹のサーキットを鋼の巨人達が縦横無尽に駆け抜ける。 人型汎用魔導兵器グラパール、それが三体。 轟くエンジン音の咆哮は不可視の刃となって地上に降り注ぎ、衝撃波の斧が朽ちた街に止めの一撃を見舞う。 崩れ落ちる廃ビル、抉れる地面……だが刃金の覇者達はそのような〝路端の石ころ〟など気にも留めず、空色の舞台で闘争のダンスをひたすら踊り続ける。 『うおおおおおおおおおおっ!!』 額にブレードアンテナの一本角を装備した青色のグラパール、エリオの駆る機体が腕のブレードを引き抜き、背面スラスターを爆発させるような勢いで噴かして加速する。 同時に左右の側頭部から獣の耳のようにアンテナを生やした桃色基調のグラパール、キャロの専用機がハンドガンを構え、エリオ機を援護するように魔力弾を撃ち出した。 『シューティングレイ!!』 凛としたキャロの声と共に放たれた二発の魔力弾が、漆黒の機体色以外は特に特徴の無い三機目のグラパール――区別上、以後〝プロトグラパール〟と呼称――に迫る。 更にエリオ機の握るブレードの切っ先に紫電が迸り、まるで鞘を被せるように電撃の膜が刀身全体を覆う。 『メッサーアングリフ!!』 エリオの怒号と共に、電光を纏う鋼の刃がプロトグラパールへと鋭く突き出される……が、 「……ふん」 漆黒のグラパールのパイロットシートに窮屈そうに身を納める巨漢、ロージェノムは、迫り来るエリオ機の突撃を鼻で笑う。 プロトグラパールが緩慢な動作で右腕を突き出し、そして親指と人差し指、二本の指先で挟み込むようにエリオ機の切っ先を受け止めた。 瞬間、掴まれた切っ先からまるで毒に侵されるように、ブレードを覆う電撃の「鞘」が霧散していく。 死角に回り込みながらプロトグラパールを襲うキャロの射撃魔法も、着弾の直前に粒子レベルに分解されてしまう。 AMF……エリオは忌々しそうに表情を歪めた。 先日のリニアレール襲撃事件の後、サンプルとしてレリックと共に回収されたガジェットの残骸。 スクラップ同然の残骸からサルベージしたAMF発生システムを、ロージェノムはグラパールの防御システムに組み込んだのだ。 対物理バリアとAMFという二重の楯に護られたプロトグラパールに、エリオ達の攻撃は切っ先一つ、弾丸一つとして通せなかった。 「その程度か? 魔導師よ……」 気だるそうなロージェノムの声と共に、プロトグラパールがブレードを掴む指先を弾いた。 直後、まるで見えない壁をぶつけられたかのようにエリオ機が吹き飛ぶ。 『エリオ君!』 キャロ機に受け止められ何とか体勢を立て直す青い同型機をつまらなそうに一瞥し、プロトグラパールは姿の見えない〝四機目〟を探して視線を彷徨わせる。 正面から左右、背後に頭上、そして足下……いた。 眼下に広がる瓦礫の山、廃棄都市のなれの果て、その一角に確かに見つけた。 倒壊しかけた廃ビルの屋上で右腕を突き出し、掌の中に橙色に輝く大粒の魔力弾を生成集束させている、今は紅蓮色に塗り替えられたかつての愛機――ラゼンガン。 否……モニタースクリーンを眺めるロージェノムの双眸が、怪訝そうについと細まった。 あそこにいるのはラゼンガンではない、肝心の頭が分離している。 ラゼンだけか、ではラガンはどこへ消えた? 索敵の網を蜘蛛の巣のように張り巡らせるプロトグラパールの周囲を、まるで道のように幅広な光の帯が突如幾重にも取り巻いた。 これは確か、ウィングロードとやらだったか……まるで周りの空間ごと捕らえるかのように球形に機体を取り囲む光の檻を、ロージェノムは興味深そうに眺め遣る。 その時、プロトグラパールの頭上で何かが光った。 雄叫びを上げながら漆黒の巨人に急速接近する、額と両腕からドリルを生やした「顔」……ラガンだ! 「不意を衝いたつもりだろうが……甘いな」 欠伸交じりなロージェノムの呟きと共に、プロトグラパールが右腕を持ち上げ……その時、空色の光の鎖が鋼の右腕を絡め取った。 バインド……モニタースクリーンを走るロージェノムの瞳が、掌から魔力の鎖をのばす青いグラパールを捉えた。 『うおおおおおおおおおおおっ!!』 スバルの声で怒号を轟かせながら、ラガンは着実にプロトグラパールに近づいている。 ウィングロードの監獄に囚われ、その上バインドの鎖に繋がれた今、迫り来るラガンの一撃を躱すことは不可能だろう。 だが対抗策が無い訳ではない……躱せないならば正面から打ち砕けば良い、それだけだ。 「この程度で王手を掛けたなどと」『思ってる訳ないでしょうが!!』 怒号するロージェノムへの返答の声は、即座に、それも背後からもたらされた。 廃ビルの屋上に仁王立ちするラゼンが蜃気楼のように消え失せ、代わりにプロトグラパールの背中の向こうに〝頭の生えた〟ラゼンガンが突如出現する。 『クロスシフトC、征くわよ!!』 ティアナの怒号と共にラゼンガンが尻尾を引き抜き、渾身の力を籠めて刀のように振り下ろした。 同時にエリオ機もブレードを構え、バインドの鎖を巻き取りながら弾丸のようにプロトグラパールに突撃する。 『テールサーベル、脳天唐竹割りぃ!!』 『シュペーアアングリフ!!』 挟み撃ちにするように前後から迫るラゼンガンの偃月刀とエリオ機のブレードを、二条の刃金の煌めきが受け止める。 いつの間にかプロトグラパールの左右の手には、エリオ機と同じブレードが握られていた。 二刀流……瞠目するティアナの前に通信ウィンドウが展開し、不敵な笑みを浮かべたロージェノムの顔が映し出される。 『まさか尻尾にそんな使い方があったとはな、些か驚いた。だが戦とは敵の裏の裏を衝くもの……詰めが甘かったな』 いけしゃあしゃあと……ロージェノムの挑発に激昂しかける感情を、ティアナは理性で無理矢理抑え込んだ。 頭を冷やせティアナ・ランスター、戦いの必需品は熱いハートとクールな頭脳だ。 「アンタが裏の裏を衝くって言うんなら、アタシは裏の裏の裏を攻めるまでよ! ギガドリル――」『遅い』 左腕をギガドリルに変形させるラゼンガンの一瞬の隙を衝き、プロトグラパールがブレードを滑らせた。 鈍色の軌跡を虚空に描きながら横薙ぎに振るわれたブレードの切っ先は、ラゼンガンの首筋に正確に吸い込まれ――次の瞬間、まるですり抜けるように〝首の中を素通り〟した。 手応えは無かった。 まるでそこに何も無いかのように、まるで幻でも見ているかのように。 幻術……驚いたように目を見開くロージェノムの前で、ラゼンガンの頭部が陽炎のように揺らめきながら消え去った。 更に残る首から下の部分も、まるで肉体の成長が退行したかのように一回りサイズが縮み、左腕のギガドリルも霞のように消滅した。 そしていつの間にか周囲を取り囲むウィングロードの檻さえも、まるで幻のように魔力光の残滓すらも残さずに消え失せている。 ただ一つ、雄叫びと共に頭上から流星の如く突進するラガンだけは、消え去ることなく未だ存在していた……恐らくあれは、あれだけは本物なのだろう。 全ては幻、空の上のラガンを如何に〝偽物らしく見せる〟かという一点だけに徹した道化芝居……この時になってロージェノムは漸く全てを理解した。 「敵に裏の裏の裏まで読ませておいて、実は裏の裏の時点で正面突破! クロスシフトCの〝C〟はCheat(詐欺)のC、深読みに溺れて沈んでなさい!!」 ロージェノムの思考を読んだかのようなタイミングで、この企てを演出した策士――ティアナがラゼンのコクピットで高らかに笑う。 エリオのバインドを引き千切り、プロトグラパールが背面スラスターに火を点す……が、 『逃がさない……クロスファイヤーシュート!!』 ティアナの怒号と共に生成された無数の魔力弾が、離脱しようとするプロトグラパールに四方から襲いかかった。 怯む漆黒の機体を橙色と薄桃色に光る新たな鎖、ティアナとキャロのバインド魔法が拘束し、更にエリオも鎖を再構成して、三方向からプロトグラパールの動きを封じ込める。 「スバル! やっちゃいなさい!!」 声を弾ませるティアナに応えるようにラガンのドリルが、バインドの鎖に拘束されたプロトグラパールに真っ直ぐに迫る。 『ラガンインパクト!!』 スバルの声で蒼穹を震わせるラガンの咆哮を、ロージェノムは愉快そうな笑みと共にモニタースクリーン越しに見上げる。 そして、次の瞬間――、 「ぜーったいに、納得出来ない! 認めたくない!!」 モニタースクリーンの一面に表示される「YOU LOSE」の二単語を怨敵でも見るような目で睨みながら、ティアナはシミュレーターの筺体を力任せに殴りつけた。 エリオとキャロは落ち込んだように表情を曇らせ、スバルは精魂尽き果てたような顔で床に座り込んでいる。 策は完璧だった。 逃げ場は封じ、隙も潰し、万が一必殺のラガンインパクトが躱された時のための次なる一手も用意していた。 常識的に考えて、並の人間ではティアナの策略の檻から抜け出すことは不可能、その筈だった。 ティアナ達の敗因はただ一つ……敵が「並の人間」でも「常識の通じる相手」でもなかった、ただそれだけだ。 正面の大型モニターでは、模擬戦の決着の瞬間――つまりティアナ達の敗北の瞬間――が、まるで嫌味のように何度もリピート再生されている。 モニターの映像を苦々しそうな目で見上げながら、ティアナは屈辱の瞬間を反芻した。 それは一瞬の出来事だった。 重力をも味方につけて垂直降下したスバルのラガンは、プロトグラパールの額から突如飛び出したニードル状のドリルに突ら抜かれてあっさりと撃沈、断末魔の絶叫と共に爆破四散した。 スバル撃墜のショックを引きずりながらも即座に反撃の刃を振り上げるエリオのグラパールとティアナのラゼンを、プロトグラパールは身を縛る三重のバインドごとブレードで一刀両断。 返す刃でキャロのグラパールのコクピットを貫き、シミュレーションは終了。 まさに瞬殺だった。 「機体性能は互角って言ってるけど、アレ絶対嘘よ! 詐欺よチートよインチキよ!!」 憤慨するティアナに便乗するように、モニター越しに模擬戦を観戦していたメカニック達も騒ぎ出す。 「そうだ! 幾ら何でもアレは酷いぞ!?」 「子供に華持たせる優しさはねーのか、あの髭親父は!!」 「大人げねーぞ所長! ガキ共に賭けた俺の食券返せーっ!!」 好き勝手に野次を飛ばすメカニック達だったが、当の本人が筺体を軋ませながら顔を出した瞬間、まるで時が止まったかのようにブーイングの嵐は消え去った。 エリオとキャロも、何かを言いたそうな顔でロージェノムを見つめていたが、結局何も言わずに視線を逸らした。 先頭を切って不満を爆発させていたティアナでさえも、いざ本人を前にすると流石に委縮してしまい、顔を強張らせながら自然と後退りする。 そしてスバルは……いつの間にかシミュレーターの筺体に背を預けて舟を漕いでいる、論外だ。 このオッサンに正面から文句を言える奴がいたら見てみたい……メカニック達の顔に浮かぶ畏怖の表情が、この場の支配者が誰かを雄弁に語っていた。 だが――、 「もう……駄目ですよ、ロージェノムさん。あんまり虐め過ぎちゃ……」 王の横暴に真っ向から異を唱える勇者もまた、確実に存在した。 「この子達はこれからが伸び盛りなんですから、成長の芽を潰すような真似は困ります」 そう言って困ったような、それでいてどこか怒ったような表情でロージェノムを見上げるのは、教導隊の白い制服に身を包む隊長陣筆頭、誰もが認めるエースオブエース。 「なのはさん……?」 思わぬ人物の登場に思わずたじろぐティアナ達を振り返り、なのはは顔の前で人差し指を立てながら口を開く。 「途中からわたしも皆のシミュレーションを観てたんだけど……駄目だよ、四人共? 幾らガンメンに乗ってるとはいえ、あんな綱渡りな機動は教官として認められないな。 わたしはガンメンのことはよく分からないし、皆が頑張ってるのは解るけど、模擬戦は喧嘩じゃないんだから。 シミュレーションだから、仮想空間だからって好き勝手に暴れちゃ駄目……折角魔法も戦い方も毎日一生懸命練習してるんだから、模擬戦でも練習通りにやろうよ?」 眉を寄せながら説教するなのはに、ティアナは居心地悪そうに視線を逸らし、エリオとキャロは俯き、そしてスバルは幸せそうな顔でいびきをかいている。 だが、その時――、 「確かに模擬戦は喧嘩ではない。だが子供のお遊戯という訳でもあるまい」 なのはの訓戒に異を唱える者が現れた……ロージェノムだ。 「実戦は不測の事態と不確定要素の集合体だ。幾ら練習を繰り返したところで、その思惑通りに事が運ぶことはあり得ない。 ならば互いの今持てる知恵と力の全てを惜しみなく出し合い、己の限界を以てぶつかり合うことこそが模擬戦の真髄ではないのか」 「それで味方同士潰し合ったら元も子もないでしょう!?」 「その程度で潰れるならば元より芽など無い」 「それは強者の理屈です、皆が貴方のように強い訳じゃない!」 ロージェノムの紡ぎ出す言葉の全てを、なのはは噛みつくような勢いで否定する。 普段の穏やかな姿とは似ても似つかぬなのはの剣幕にティアナ達が唖然とする中、ロージェノムは眼前の小娘を悠然と見下ろし、そして薄く嗤った。 「……若いな」 ロージェノムの呟きが格納庫に木霊し――その瞬間、空気が凍った。 まるで能面を被ったかのように、なのはの顔から表情が消える。 あのオッサン、地雷を踏みやがった……! なのはの変貌にメカニック達が声無き悲鳴を上げ、ティアナが顔色を失い、エリオとキャロが怯え、そしてスバルが爆睡する中、いよいよ二人は険悪なオーラを爆発させる。 「わたしの言ってること、わたしの教導……そんなに間違ってますか?」 「無知とは恐ろしいものよ。お前は自分を正義と信じているのかもしれんが……それは違う」 捻じり渦巻く二人の言葉は、しかし決して交わらぬ平行線を辿っていた。 螺旋の光を宿すロージェノムの視線と、不屈の焔を灯すなのはの眼光が中空で激突し、バチバチと火花を飛ばしながらせめぎ合う。 まさに一触即発。 全員が固唾を呑んで二人の舌戦の成り行きを見守る中、まるで最後の決着をつけるかのように同時に口を開いたなのは達の言葉は――けたたましく鳴り響く非常警報に掻き消された。 天元突破リリカルなのはSpiral 第11話「スバル達は強くなるよ」(了)
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魔法少女リリカルなのはStrikerS 第19話【ゆりかご】 はやて「地上本部と機動六課壊滅の日から一週間。傷ついた隊員たち、奪われたもの。 部隊長としての失態。悔やむのと責任をとるのは、事件が全部済んでから。 四年前に決めた…事件があるならそこにまっすぐ向かって行くこと。 任務に最適なエースとストライカーたちを、そこに向かわせてあげること。どんな邪魔が入ろうと、 そこだけは譲れへん。一秒でも早く、こんな事件を終らせるために」 アルト「ヴァイス陸曹。手術、お疲れ様でした。機動六課の、私たちの704式ヘリは壊れちゃいましたけど、 ヴァイス陸曹のストームレイダーは無事でしたよ。シグナム副隊長がちゃんと持ってきてくれました。 後のこと、何も心配ないですからね。落ち着いて、ゆっくり休んでて下さい。ヴァイス先輩の後輩として、 六課のロングアーチスタッフとして、皆を運ぶ仕事は、私が引き継ぎます!」 フェイト「ルキノ、コントロールは大丈夫?」 ルキノ「はい、フェイトさん!この子の、アースラのことは、隅から隅まで知ってますから」 フェイト「そう…」 なのは「アルトは療養中のヴァイス君に代わってヘリパイロット」 フェイト「ルキノはアースラの総舵手」 はやて「ちょうど良かった。今、機動六課の方針が決まったところや」 グリフィス「地上本部による事件への対策は、残念ながら相変わらず後手に回っています。 地上本部だけでの事件調査の継続を強行に主張し、本局の介入を固く拒んでいます。 よって、本局からの戦力投入は、まだ行われません。 同様に、本局所属である機動六課にも捜査情報は公開されません」 はやて「そやけどな。私たちが追うのは、テロ事件でもその主犯格としてのジェイル・スカリエッティでもない。 ロストロギア、レリック。その捜査線上に、スカリエッティとその一味がおるだけ。 そういう方向や。で、その過程において誘拐されたギンガ・ナカジマ陸曹となのは隊長とフェイト隊長の保護児童、 ヴィヴィオを捜索・救出する。そういう線で動いていく。両隊長?意見があれば」 なのは「理想の状況だけど、また無茶してない?」 フェイト「大丈夫?」 はやて「後見人の皆さんの黙認と協力は、ちゃんと固めてあるよ。大丈夫。何より、こんな時のための機動六課や。 ここで動けな、部隊を起こした意味もない」 なのは「了解」 フェイト「なら、方針に依存はありません」 はやて「おしっ。ほんなら、捜査・出動は本日中の予定や。万全の体制で、出動命令を待っててな」 一同「はい!!」 なのは「ティアナ、スバルはまだ」 ティアナ「はい。本局のほうに、でもっ、午後にはこっちに合流できるそうです」 スバル「ごめんね、マッハキャリバー。私のこと、怒ってるよね?」 マッハキャリバー「「怒る」という感情が、私にはおそらく存在しません。心配は不要です」 スバル「マッハキャリバーは、AIだけど心があるって、一緒に走る相棒だって、言ったのに。私あの時、 マッハキャリバーのこと全然考えてなかった。自分勝手に、道具扱いして。こんなに、傷つけちゃった」 マッハキャリバー「いいえ!問題があったのは私のほうです。あなたの全力に応えきれなかった、私の力不足です。 もう一度、私にチャンスを下さい。今度は必ず、あなたの全力を受け止めます。 あなたが、どこまでも走れるように」 スバル「うん!今度は絶対、一緒に走ろう!マッハキャリバー」 なのは「訓練データの移行、大丈夫だった?」 レイジングハート「問題なく完了しました」 なのは「うん」 リィン「あ、なのはさん、レイジングハート」 なのは「リィン。怪我はもういいの?」 リィン「はいです!おかげさまで、完全回復です!」 なのは「そっか」 リィン「シャーリーから、クロスミラージュたちのファイナルリミッター解除を頼まれたですよ?」 なのは「うん。私がお願いしたの。…本当は、もう少し慎重に行きたかったんだけど、そうも言ってられない状況だからね」 リィン「でも皆、きっとちゃんと使いこなせるですよ」 なのは「だね」 リィン「なのはさんとレイジングハートのほうは…」 なのは「……」 リィン「ノーマル状態のエクシードはともかく、ブラスターモードは…やっぱり危険ですから!」 なのは「使わないよ。ブラスターは、私とレイジングハートの…本当に最後の切り札だからね」 レイジングハート「その通りです」 なのは「エクシードだけでも、充分すぎる威力があるんだし、それでしっかり、最後まで決めてみせるよ」 レイジングハート「Yes」 なのは『もうすぐだよ…。なのはママが、すぐに助けにいくから!』 シグナム「テスタロッサ、おまえか」 フェイト「どうも、うちのエリオがお世話になってます。シグナム師範代」 シグナム「すまんな。おまえの判断を仰がなかった」 フェイト「エリオが言い出して、あなたが受けてくれたんですから。 いいですよ、私は。ちょっと、寂しいですけど」 シグナム「エリオなりにおまえに、母親に心配かけたくない一心だ。察してやれ」 フェイト「はい、大丈夫です。エリオ、成果のほうはどうです?」 シグナム「悪くない…というか、あの成長速度には、正直驚かされるな。基礎しか知らん子供のわりに、 見切りと覚えの速さは凄まじい。思考と行動の瞬発力もある」 フェイト「なのはが、そういう風に教えてくれてるんです。基礎と基本でしっかり固めた頑丈な土台と模擬戦から学ぶ、 瞬間の判断力と応用力。今まで積み重ねた練習と経験はあの子達が、 これからももっともっと強くなっていくための準備。 皆が自分で思い描いた通りに、昨日よりもっと今日よりずっと、強くなっていけるように、って」 ヴィータ「シャマル~、まだかぁ?」 シャマル「うん、もうちょっと」 ヴィータ「仕事溜まってんだよ。さっさと済ませてもどらねぇと」 シャマル「後少しだから、じっとしてて」 ヴィータ「傷の治りが遅くなってんのとか、蓄積ダメージが抜けづらくなってんのなんて、 もう何年か前から分かってることじゃんかよ~」 シャマル「再生機能だけじゃないのよ。守護騎士システムそのものの異常も不安なの。 私たち同士の相互リンクも弱くなってるし、緊急時のはやてちゃんからのシステム復旧とか、 魔力供給も…だんだんできなくなってきてる」 ヴィータ「別に、そんなん日ごろからしっかりやってりゃなんの支障もねぇ。もういいな?行くぞ」 シャマル「ヴィータちゃん」 ヴィータ「あたしらの身体の異状さ。たぶんこれ、守護騎士システムの破損とか異変とか、そういうんじゃねぇと思うんだよ。 あたしたちが闇の書の一部だった頃から、心のどこかで望んでたことが、叶い始めてんだ。 死ぬこともできずにただずっと生きてきたあたしたちが、最後の主の…はやての下で、 限りある命を大切に生きられるようにって。初代リィンがあたしたちにくれた贈り物。それの続きさ。 いいじゃんか。怪我したらなかなかなおらねぇのも。やり直しがきかねぇのも。何か、普通の人間みてぇでさ」 シャマル「うん。シグナムもザフィーラも、同じこと言うのよね。最初で最後の私たちの命。 大切に、だけど精一杯使って生きればいいって…」 ヴィータ「シャマルは?」 シャマル「私も同じよ。危険は怖くないし、永遠になんて興味ない。でも、私たちの優しい主、はやてちゃんのことと同じくらい、 私はヴィータちゃんやシグナム、ザフィーラたちが心配。皆で一緒に、誰もいなくならずに、 はやてちゃんとリィンちゃんのこと、ずっと支えていきたいから」 ヴィータ「なら、心配ねぇ。二代目祝福の風が、リィンが力を貸してくれる。あたしとシグナムは絶対に落ちねぇ! ザフィーラもきっとすぐに目を覚ます。10年の間に守らなきゃならねぇものが随分増えちまってなぁー。 きっちり全部守って、ちゃんと元気で帰ってくるさ。心配性で料理が下手な湖の騎士を、泣かせたりしねぇようにな」 シャマル「馬鹿ね」 ウェンディ「いやぁ~、データ蓄積のおかげで随分楽に動けるようになったッスね~。ね! オットー、ディード!そう思わねぇッスか?」 オットー・ディード「……」 ウェンディ「うっ、くっそぉ。こいつら苦手ッス」 ウーノ「失敗の目立つ人造魔道師と比較して、私たち戦闘機人はトラブルが少ないですね」 スカリエッティ「元は最高評議会主動で、管理局が実用寸前まではこぎつけていた技術だからねぇ。 それから私が随分と時間をかけて改良したんだ」 ウーノ「良質なはずです」 スカリエッティ「人造魔道師の製造もまた、ゼストやルーテシアが長期活動してくれたおかげで、 随分と貴重なデータをとることができた。彼らの失敗と成功のおかげで、聖王の器も見事完成をみた」 ウーノ「この聖王のゆりかごを発見し、触れることができて以来、その起動はあなたの夢でしたから。 そのために聖王の器たる素材を捜し求め、準備も整えてきた。夢が、叶う時ですね」 スカリエッティ「まだまだ~。夢の始まりはここからなんだよ、ウーノ。古代ベルカの英知の結晶。 ゆりかごの力を手にして、ここから始まるんだ。誰にも邪魔されない!楽しい夢の始まりだぁ!」 シャッハ「こんな、洞窟の奥に?」 ヴェロッサ「僕の猟犬を発見して、その上一発で潰した。並みのセキュリティじゃない。ここがアジトで間違いないね」 シャッハ「凄いですね、ロッサ。こんな場所、よく掴めました」 ヴェロッサ「シャッハ、いいかげん僕を子供扱いするのは止めて欲しいなぁ。 これでも一応カリムやはやてとおんなじ、古代ベルカ式のレアスキル継承者なんだよ」 シャッハ「無限の猟犬、ウンエントリヒ・ヤークト。あなたの能力は、存じ上げていますよ」 ヴェロッサ「ま、今回の発見は、フェイト執務官やナカジマ三佐の部隊の、地道な捜査があってこそのものだけどね」 ヴェロッサ「はやて!こちらヴェロッサ。スカリエッティのアジトを発見した。シャッハが今、 迎撃にきたガジェットを叩き潰してる。教会騎士団から戦力を呼び寄せてるけど、 そっちからも制圧戦力を送れるかい?」 はやて「うん。もちろんやけど」 シャーリー「戦闘機人、アインヘリアルから撤収。地上本部に向かっています。 あの騎士も、別ルートで本部に向かっています」 シグナム「……」 ルキノ「廃棄都市から別反応。エネルギー反応膨大!これは、戦闘機人!こちらも、地上本部に向かってます!」 スカリエッティ「さぁ、いよいよ復活の時だ。私のスポンサー諸氏、 そしてこんな世界を作り出した管理局の諸君。偽善の平和を謳う聖王教会の諸君も、見えるかい? これこそが、君たちが忌避しながらも求めていた絶対の力!旧暦の時代、一度は世界を席捲し、 そして破壊した。古代ベルカの悪魔の英知」 ヴェロッサ「聖王の、ゆりかご」 スカリエッティ「見えるかい?待ち望んだ主を得て、古代の技術と英知の結晶は今その力を発揮する!」 ヴィヴィオ「ママ。う、うぇぇん…痛いよぉ、怖いよぉ~!ママー!ママー!!」 なのは「ヴィヴィオ」 スカリエッティ「さぁ!ここから夢の始まりだ!はははは!あーははははは!!」 次回予告 はやて「予言に出ていた聖地より帰った船」 フェイト「ゆりかごを得て、スカリエッティの計画はついに最終段階に」 はやて「次回、魔法少女リリカルなのはStrikerS第20話」 フェイト「無限の欲望」 はやフェ「Take off!」
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「ボイス!どういうことだよ、これは!?」 新メンバーの面接ということで誰が来るのかと思いきや、現れたのは小さな子供。真墨でなくとも、驚くのは当然だろう。 「ブラック君。そう怒らないでほしい。彼女達はサージェス・ヨーロッパからの推薦なんだよ」 「サージェス・ヨーロッパの紹介!?あのガキが!?」 指を指された少女はムスッとした顔で、真墨を睨んでいる。反対に隣の女性は全く表情を変えず、涼しい顔だ。 「まあまあ、いいじゃないですか。僕としてはメンバーの女性比率が高いのは大歓迎」 「菜月も可愛い子が一緒なのは嬉しいよ」 「お前らそういう問題かよ!」 蒼太と菜月が真墨の両肩を叩く。 最初は二人とも驚いていた癖に、いつの間にか不満思っているのは真墨だけになっていた。この二人は比較的こういったことに無頓着なタイプである。いつもつっこみ役だ。 (やれやれ……。さくら姐さんがいたなら俺と同じことを言っただろうなぁ……) 真墨は宇宙に旅立ったボウケンピンク――西堀さくらを思い出した。 「ともかく、能力に関しては問題ない。そこら辺は実際にミッションで確かめてもらうしかないね」 ミスター・ボイスがこう言うなら真墨もあまりしつこくは言えないのだ。さて、あの二人がどれほどのものか――真墨は一抹の不安を隠せなかった。 ――命懸けの冒険に今日も旅立つ者がいる。秘かに眠る危険な秘宝を守り抜くために、あらゆる困難を乗り越え進む冒険者達―― 魔法少女リリカルなのはVS轟轟戦隊ボウケンジャー ExtraTask02 隠されし術 周囲に張られてた結界は消え、今は気配も感じない。ユーノと映士は、カース達と戦った場所でお互いの情報を簡単に交換した。 アシュはユーノの知るどの世界にも存在しない。だが、不思議と各世界に伝わる伝説や伝承に登場する魔人や鬼の類と彼等のイメージは重なった。 ユーノは砕かれたカースの欠片に目をやる。欠片を取り、目を閉じてしばらく意識を集中させ、微かな魔力を感じ取る。 「何やってんだ、ユーノ?」 後ろから映士がそれを覗き込んだ。知らない彼からすれば不自然に見えるのだろう。 「高岡さん。これは石に魔力を注ぎ込んで形を形成した後、仮初めの命を与えたものですね。」 「ああ。古代ゴードム文明の大神官、ガジャって野郎が使ってたもんだ。」 「はい、この破片からは魔力を感じます。でも、高岡さんの話だと、ガジャは海の底……」 ユーノは口に手を当て考え込む。これを形成した魔法がこの世界のものなのか、それとも他のものなのか――それはわからない。 この世界には魔法は存在しないとなっているが、映士から聞いたアシュの術やガジャの術、そして高岡の術。管理外のこの世界で、かつて魔法が存在した可能性は十分にある。 それも管理局の全く知らない魔法体系―― 「おい……おい!」 「うわっ」 突然、眼鏡を弾かれ仰け反るユーノ。一瞬視界が歪む。 眼鏡を直すと目の前には映士の顔があった。どうやら声を掛けられていたのに気付かなかったらしい。 「ったく、さっきからずっと呼んでるのに気付かねぇのか?」 「すいません……それで高岡さん、アシュについては大体わかりました。それじゃあ肝心の百鬼界の封印を解く方法はあるんでしょうか?」 今度は映士が考え込んでしまった。教えていいものか、といった様子にも見える。 「俺様も全部を全部受け継いでる訳じゃあねぇしな……。だが、アシュの封印に使った神器を奉納してる寺なら知ってるぜ」 「それじゃあすぐに行きましょう。あまり時間はないかもしれません」 そう言って駆け出そうとするユーノだったが、襟首を映士に掴まれた。 「まあ待てよ。このことはサージェスに報告しとかねぇとな。アシュが関わっているならなおさらだ」 「ですが――」 あまり時間がないというのは、あくまで憶測の範疇を出てはいない。 それに、ユーノが急ぎたがるのは――正直なところ、憧れが大きかったりする。 発掘者の一族として多くの遺跡を発掘し、古代の遺産に触れてきた。ジュエルシード等、いいことばかりではなかったが、それでも発掘が好きだと今は思う。 無限書庫の司書になってからは数多の知識に触れ、想像と思索を繰り返してきた。 未知の術や世界は、彼の知的好奇心を刺激するには十分すぎるものだった。それを目の前にしては、走り出そうとするのも無理はない。 「わかりました。それじゃあそのお寺の場所を教えてください。僕は先に行ってますから、高岡さんは後から追いかけてきてくれれば」 ユーノの言葉に映士は頷き、寺の地図を渡す。 「爺さんと孫の二人だけだ。俺様の名前を言えば多分わかるだろ」 「ありがとうございます。それじゃあ――」 と、数歩走り出したところで足を止め、振り向く。 「あ、それと……今回の件ですが、まだ確実な段階でないことや、情報が漏れることを考え、管理局から魔導士の存在は極力明かさないよう言われています。ですからボウケンジャーの皆さんにも、今はまだ秘密にしておいてください」 それだけ捲くし立てて今度こそ走り出した。映士が後ろから呆れ半分の笑みを浮かべていることにも気付かなかった。 その日、ボウケンジャーのサロンの空気は最悪と言ってもよかった。 主な理由は新人のシグナムとヴィータにある。 紹介の後、シグナムは一言も喋らずサロンに座っている。蒼太が何やらモーションをかけているが、ほぼ無反応だ。 ヴィータの方はもっと問題だ。菜月も彼女と打ち解けようと頑張ってはいるが、当たり散らしては不機嫌そうにしている。 このままではまずいか――真墨はそう思い、シグナムとヴィータに話し掛けた。 「なあ、なんでお前らはボウケンジャーに入ったんだ?」 彼なりに親睦を深めようとの質問だったのだが―― 「それが命令だからだ」 と、シグナム。 「はやての頼みじゃなきゃこんなとこ……」 と、ヴィータ。 彼女らの答えを聞いた真墨は机を叩いて立ち上がった。サロン内にその音が響き、険悪な空気が漂う。 睨み付ける真墨の視線を二人は無言のまま真っ向から受け止め、見えない火花を散らした。 そのまま固まる時間。沈黙は菜月や蒼太にも広がる。 数十秒ほどなのに、それは随分長く感じられた。 「チッ!」 先に動いたのは真墨だった。軽く舌打ちしてサロンを立ち去る。 蒼太と菜月も顔を見合わせ、後を追いサロンを出た。 「ねえ、真墨。ちょっと言われたからって気にするなんてよくないよ?」 廊下を歩く真墨に菜月が駆け寄る。それでも歩みを止めないと、真墨の前に立ち塞がった。 「そうそう蒼太。彼女達もまだ慣れてないんだと思うけど?」 菜月に遅れて蒼太もゆっくりと近づいてくる。 「そんなことはわかってるんだよ。ただ……俺達はみんな理由はそれぞれ別でも、自分の意思でボウケンジャーに入隊したんだ。明石も言ってただろ?俺達は皆なにかを求めて冒険しに集まった、って」 それ故に、嫌々ここに来たような口振りの彼女らについ腹が立ってしまった。 歩くうちにいつの間にか外に出ていた。真墨は腕を頭の後ろで組み、空を仰ぐ。太陽が眩しくて目を細める。 「やっぱり明石のようには行かねえな――」 前ボウケンレッドの明石暁から受け継いだチーフの位置。これまでは知ったメンバー同士で問題なくミッションも遂行できたが、新人の相手はこれが初めてである。 最初からこれで大丈夫だろうかと不安にもなるというもの。 「でもさぁ、ヴィータちゃん達にここに来るように言った人って誰なんだろうね?」 「はやて、って言ってたね。ボウケンジャーの仕事を知ってて、サージェスに顔が利く人なのかな?」 それは真墨も気になった。だが、聞いたところで教えてくれるだろうか? 彼女達にはなにやら秘密がある――真墨の勘がそう告げていた。 シグナムとヴィータは二人、サロンに取り残されていた。 「なぁ、シグナム……なんであたし達二人なんだろうなぁ?」 だが、今のシグナムにその疑問に対しての答えは持っていなかった。なにしろ彼女自身もそれが気になっているのだから。 ――時空管理局、次元世界の管理をする機関に彼女達は所属している。 管理局はロストロギアと呼ばれる危険な古代遺産の確保に力を注いでおり、彼女達がここにいるのも、その調査のためである。 だが、本来二人はこういった任務をすることはほとんどない。それにそれぞれが別の部署に仕事を持っているのだが、何故かロストロギアの潜入調査に選ばれてしまった。 "彼女"から任務のことを聞いた時は正直、驚きを隠せなかった。なにせ現地の組織に短期間とはいえ素性を隠して所属しろというのだから―― 「シグナムとヴィータに行ってもらいたいねん。うちが二人を推薦しといたから」 それは八神家のリビングでのことだった。 八神はやて――ロストロギア『闇の書』もとい『夜天の魔導書』の主であり、同様に自分とヴィータの主でもある少女。かつては足の麻痺に苦しんでいたが、今ではそんなことは感じさせず中学校にも通っている。 「何故、我々なのですか?」 確かそう聞いたはずだ。確かに自分達は生身での運動能力にも優れている方だし、生半可なことではやられはしないだろう。 だが、それでも彼女があちこちに根回ししてまで、自分とヴィータを派遣する理由にはならない。その疑問はヴィータも同じだった。 「そうだよ。なんであたし達なんだ?そもそも管理局の仕事はどうするんだよ」 「それについては心配せんでええ。上手く埋め合わせしてくれるはずや」 彼女はニコニコしながらお茶を啜っている。この笑顔で頼まれると正直断りにくい。 「わかりました。ですが……任務を終えた際はその理由を聞かせてもらえますか?」 彼女は笑みを絶やさず、しかし、その眼はまっすぐにこちらの眼を見ている。長い付き合いで自分もヴィータもわかっている。それは誤魔化しなどでは決してなく、彼女は自分達を信頼して言っているのだ、と。 「行けば解るはずや。二人ならきっと――」 次の日、ボウケンジャーはミスター・ボイスによってサロンに集められた。シグナムとヴィータも昨夜は他のメンバーと同様に、与えられたサージェスの個室で休んだらしい。 「それで、どうしたんだボイス」 真墨の問いにモニターに写ったCGが答える。 「うん。先日、サージェスヨーロッパのプレシャスバンクから、『バジリスク』の化石が盗まれた。石化し、複数の部位に分かれたものだ。それが日本に渡った可能性がある」 「バジリスクって……何だ?」 ヴィータが首を傾げた。真墨が昨日確認した限りでは、彼女達は身体能力はずば抜けている。もしかするとボウケンジャーのメンバー以上かもしれない。だが反面、サバイバル能力や地理、宝や伝説についての知識は著しく欠如していた。 「バジリスクっていうのは、伝説上の魔物でね。八本足のトカゲで猛毒を持ち、睨んだ生き物を石に変える。色々伝説はあるけど、大体こんな感じ」 蒼太がパソコンを開いてヴィータに説明した。 「へぇ~、そんな生き物がいるんだ」 ヴィータは蒼太のパソコンを見て目を輝かす。真墨には、その仕種は歳相応のものに思えた。 「バジリスクの眼球だけは、過去に日本に渡ったとされている。化石とはいえ、ものがものだ。瞳は特にハザードレベルが高い。大まかな場所は調べてあるから、君達には先に眼球を確保してもらいたいんだ」 「ものがもの――か。探すのも十分注意が必要だな。ボウケンジャー出動だ。早速現地に向かうぞ!」 「了解!」 真墨の号令に菜月と蒼太が応じる。 「ああ、ちょっと待ってください」 中年の男性がサロンに入ってきた。ボウケンジャーの装備やビークルの開発やメンテナンスを担当しているメカニックの牧野森男だった。 プレシャスの解析も行う、ボウケンジャーを支える最も重要な裏方といえる。 「ヴィータ君とシグナム君のアクセルラーです。持っていって下さい」 そう言ってアクセルラーを手渡す。 ――アクセルラー。携帯電話型のそれは、アクセルスーツの装着のためのアイテムであり、その他にも通信や各種のツールが仕込まれた、いわばボウケンジャーの証とも言える。 だが、真墨に言わせれば、それは『ボウケンジャー』の証でこそあれ、『冒険者』の証ではない。 この出動は彼女らの入隊テストも兼ねている。真墨は心の中で気を引き締め直した。 ボウケンジャーが出動し、サロンには牧野とボイスのみが残った。 彼らを見送った牧野は誰にともなく呟く。 「行きましたか……」 「牧野さん……。シグナム君とヴィータ君の身体データ……牧野さんならわかりましたね?」 ボイスから牧野に話しかけた。普段とはまるで違う、ひょうきんでもなければ事務的でもない。どこか憂いを秘めた口調。 「ええ、やはり彼女達……」 「牧野さん、それ以上は――」 ボイスが牧野の言葉を遮った。 「失礼しました」 牧野もすぐにその意図を察して軽く頭を下げる。 「何かが起ころうとしているのは確かでしょう。ダークシャドウも侵入できないプレシャスバンクから痕跡も残さず、複数の場所に分けて保存してあるバジリスクをほぼ同時刻に盗み出す――プレシャスを超える古代遺産と魔法でもなければ不可能な芸当……」 「彼女達の入隊も当然関係しているのでしょうね……」 牧野も、ボイスも、そしてボウケンジャーも。今はただ、災いの影を照らす術を模索していた―― 雄大な山々が幾つも連なる、未だ自然を多く残した山脈。霊峰と呼ばれるような山もある。 その麓からボウケンジャーの3人とヴィータ、シグナムは見上げている。 「この山のどこかにバジリスクの瞳があるのか……」 「絞り込んであるとはいえ、探すにはちょっと骨が折れるなぁ」 「でもでも、その方が冒険らしいじゃない」 ボウケンジャーの三人がそれぞれの感想を述べる中、シグナムとヴィータは無言で付き従う。 「とりあえず俺と蒼太、シグナムは東側から、菜月とヴィータは西からそれぞれ調査だ。近くまでくれば反応があるだろう。」 シグナムとヴィータは無言で頷く。昨日ほどは不機嫌でもないようだった。 菜月とヴィータはアクセルラーを片手に山中を進む。山の緑はちょうど色濃くなる時期で、むせ返るような精気を放っている。 「なあ……」 「菜月だよ、間宮菜月」 名前を思い出せなかったのを察したのか、菜月から自己紹介をした。 「菜月はなんでボウケンジャーなんてやってんだ?昔の映像や資料には入隊の時に目を通したけどさ。大変だし、何度も死にかけてるだろ?」 「う~ん、やっぱり……楽しいからかな」 「楽しい?」 「元々菜月はね……自分の過去を探すために入ったんだ――」 菜月は自らの出自をヴィータに話し出した。 10万年前の古代レムリア文明の生き残りであること―― 生れ落ちてすぐにプレシャスの力で老化を遅らせながら眠っていたこと―― 真墨に拾われトレジャーハンターをしながら過去を探していたこと―― そしてボウケンジャーに入って過去を知ったこと―― 彼女は辛い過去だっただろうに、まるでそれを感じさせない。むしろ大事そうにゆっくりと語った。 「何ていうか……大変だったんだな」 「でも今は皆と冒険するのが楽しいよ。それに思い出があったから、真墨や蒼太さんや映ちゃんが大事に思えるもん」 かつては使命しかなかった。だが、今は家族がいて仲間がいる。 ヴィータは菜月に、どこか自分と似たものを感じた。 「それに今度は、ヴィータちゃんとシグナムさんも一緒に冒険できるよ」 「な、なに言ってんだよ!」 ヴィータは赤らんだ顔を隠すために顔を背けた。 何故、彼女はこんなに素直に笑えるのだろう。――少し彼女が羨ましい。 「それにいっぱい不思議なプレシャスに会えるよ。物を大きくする小槌とか、動物の言葉が解る指輪とか、どんな姿にも変身できる反物とか」 「すげ~、本当か!?」 打出の小槌、ソロモンの指輪、虹の反物――。菜月の話す冒険譚にいつしかヴィータは引き込まれていた。 東側からは真墨と蒼太、シグナムが黙々と山上を目指していた。 「ところで何て呼べばいいかな?シグナムさん?ちゃん、って感じじゃないよね」 真墨、シグナム、蒼太の順で、真墨は二人よりやや先を歩いている。 「シグナムでいい……」 シグナムは少々うんざりしていた。さっきから蒼太が何かと話しかけてくる。それでもこちらが不機嫌そうにすると、すぐに引き下がるあたり、かなり手馴れている。 「それじゃあシグナム。昨日も真墨が聞いてたけど、ボウケンジャーにはあんまり興味が無いのかな?」 「私は主から言われてここに来ただけだ。宝探しには興味は無い」 シグナムの言葉に、前を歩く真墨が振り返った。 「おい!俺達の任務は単なる宝探しじゃない。プレシャスってのは危険な物なんだ。それを利用して世界制服や滅亡を狙う連中までいるくらいにな。 何も知らない癖に勝手なこと言うんじゃねえっ!」 激昂する真墨を、蒼太が無言で片手を出して止める。 「シグナム、確かに僕達のやってることはただの宝探しだよ。でもプレシャスに限らず、宝を探すのは大抵が危険と隣り合わせ。これでなかなか大変なんだ。」 穏やかな口調。だが、その目は笑ってはいない。 「ならば何故、何を求めてお前達は冒険をしている?」 蒼太は頭を掻いて、少し困った素振りをする。 「僕は前はスパイをやっててね。スリルはあったんだけど、楽しんでたのは僕だけだった。 幾つも国や企業を崩壊させて――僕の情報が多くの人を悲しませてるのに気付いて、それからスパイを辞めた。皆の笑顔を守って、僕自身も笑顔でいたかったから、ボウケンジャーに入ったんだ」 シグナムは 「そうか……」 としか答えられなかった。 そして己の勝手な先入観を恥じた。気楽な宝探しなどではなく、彼らにも譲れないものがあったのだ。 「まっ、何を求めてるかは、皆それぞれ違うよ。前のチーフが言ってた、"俺達は皆、自分だけの宝を探して集まった"ってね。君には無いのかい?」 「宝なら既にある。命に代えても守るべきものが――」 宝、という表現が正しいのかはわからない。だが、最も大切なものは一つしか思いつかなかった。 「私達にここにくるよう言った人――私とヴィータの主人だ」 真墨が再び振り返る。表情にはもう怒りは無い。 「大事な宝が一つじゃなきゃいけない、なんてことはないんだぜ?形のあるものでなきゃいけない、ってこともな」 「形の無い宝……?」 「お前らが何か目的があってきたのは大体察しがつく。でもな、他の宝を探すのもいいんじゃないか?」 「そんなものがあると?」 「さあな。それに関しては、俺は命令しない。自分で考えてみろ」 それだけ言うと、また歩き出した。 虫や鳥の声がする。耳を澄ますとせせらぎも聞こえてきた。 見回すと近くに沢が流れていた。見たこともない魚が泳いでいる。 振り向くと眼下には街が広がっている。 (風が気持ちいい……) この景色を見れば、きっと主はやても喜ぶだろう。いつか皆でピクニックに来るのも悪くない。 (私がこんなことを思うとはな……) 考えてみると可笑しくなり、自然と笑みがこぼれた。 菜月、ヴィータ組は徐々に山頂に近づいていた。近くからは鐘の音が聞こえる。 「おい、菜月!あれ見ろよ!」 菜月がヴィータの指す方向を見ると、少し前を三人――いや、厳密には人ではない。 「ジャリュウ一族!」 恐竜の遺伝子により生まれた恐竜人類。赤いゴツゴツした皮膚に鎧を纏っている。 だが、一体見慣れないジャリュウが混じっていた。 皮膚は赤と緑の混ざった色、顔つきも全体的に恐竜よりもトカゲに近い。眼は鈍色でくすんでいる。だが、最大の特徴は頭頂部の鶏の冠に似た襞。そして両手、両足の他に、身体の中心から生える四本の腕だろう。 「なにあれ……」 思わず菜月が呟く。それはこれまでのジャリュウの中で最も異形なフォルムだった。 「どうするんだよ、菜月。あいつらバジリスクの目玉ってのを狙ってるんじゃないのか?」 「待って、ヴィータちゃん。とりあえず後をつけよう。真墨達にも連絡して」 アクセルラーを通じて連絡した後、二人は息を殺して付かず離れずの距離を保つ。 そのまま、10分程歩いただろうか。小さな洞窟の前で彼らは立ち止まった。 洞窟の前は開けた平地のため、これ以上は近寄れない。 会話に意識を集中し、なんとか聞き取ろうとする。 「ここに……バジリスク……確かなのか……」 やはり、狙いは『バジリスクの瞳』だ。 「菜月!」 声に振り向くと、真墨達三人が追いついてきていた。 「遅いよ、真墨!」 「悪い悪い」 軽口を叩き、五人が足を踏み出す。 「待て!ジャリュウ一族!」 尾行に驚くジャリュウ一族。だが、中心の邪悪竜だけは不気味に落ち着き払っていた。 「レディ!ボウケンジャー、スタートアップ!!」 同時にアクセルラーのタービンを左腕で滑らせる。 真墨は黒、蒼太は青、菜月は黄、シグナムはピンク、ヴィータは赤の光にそれぞれ包まれ、光が消えると、アクセルスーツを身に纏ったボウケンジャーが現れる。 「迅き冒険者!ボウケンブラック!」 「高き冒険者!ボウケンブルー!」 「強き冒険者!ボウケンイエロー!」 「深き冒険者……ボウケンピンク……」 「あ、熱き冒険者、ボウケン、レッド」 シグナムとヴィータを除く三人が思い思いのポーズを決めるが、シグナムとヴィータは恥ずかしいのか随分と動きが小さい。 一帯に静寂が流れる。 「ヴィータちゃん、ダメだよ!もっとはっきり言わなきゃ!」 「こんな恥ずかしいことできるかよ!」 「シグナム。恥ずかしがってると、余計に恥ずかしいよ?」 「とはいえ、これは……」 「お前らそんな場合か!」 ブラックによって、ようやく全員が戦闘態勢を取る。やはりつっこみ役か。 「貴様らがボウケンジャーか!俺は邪悪竜『バジーク』!」 他のジャリュウとは違う、中央のジャリュウが名乗った。口からは鋭く尖った牙が見え隠れしている。 「邪悪竜だと!?」 邪悪竜――同族との殺し合いで生き残ったジャリュウにリュウオーンが力を与えたもの。 リュウオーン亡き後、新たな邪悪竜や大邪竜は確認されていなかった。少なくとも真墨の知る限りでは。 「我らジャリュウ一族は新たな力を手に入れた!少々遊んでやるとしよう!」 バジークが指を弾くと同時に、茂みからカースが現れた。数は10体、少してこずる数だ。 ブルーとイエローでカースを。シグナムとヴィータでジャリュウを。そしてバジークの前にはブラックが立ちはだかった。 「アタック!」 ブラックの号令とともに全員が動く。 ブルーとイエローはサバイブレード――ボウケンジャーの標準装備。ビームガンのサバイバスター、剣のサバイブレードの形態を切り替えることができる――を抜き放ち、背中合わせに死角を補いつつカースを攻撃する。 シグナムとヴィータは一人ずつ、ジャリュウと戦っている。武器は同じくサバイブレード。 シグナムはジャリュウの剣を的確に捌きつつ、ヴィータは小柄な身体を活かし、ジャリュウを圧倒していく。 そしてブラック――サバイバスターを構え、機会を窺う。 バジークは六本の腕に剣を握っていた。それぞれの腕が別の意思を持っているかのように蠢く。 バジークは洞窟を背にして、ブラックはバジークを中心にして左右に動く。 「サバイバスター!」 意を決してサバイバスターを連射。オレンジの光線が銃口から放たれる。 「ふんっ!」 だが、全てのビームが六本の剣に防がれてしまう。 そして、ブラックがサバイブレードに切り替えた瞬間、既にバジークはブラックの懐にまで潜り込んでいた。 「ぐぁぁぁ!!」 サバイブレードが弾かれ、残った腕の斬撃で大きく吹き飛ばされた。 アクセルスーツからは激しい火花が散り、激痛に悶える。 バジークがブラックにとどめを刺そうと近づく。その時―― 「うわぁぁぁぁぁぁ!!」 戦場に悲鳴が響き渡った。 悲鳴はバジークの背後――洞窟の入り口から。そこには幼い少年が顔を青ざめ、腰を抜かしていた。 何故こんな山奥に少年が?何故洞窟から? 誰もが一瞬動きを止め、状況を認識する時間を必要とした。 最も早く回復したのはシグナム。だが、彼女の手が少年に届く前に、バジークは素早い動きで少年を締め上げ、剣を突きつける。 「動くな!!」 シグナムは急ブレーキをかけ、ブルーとイエローはカースから飛び退く。 「言わずともわかるだろうが……動けばこのガキはどうなるかなぁ……」 「くっ……!」 少年はバジークの腕の中で泣きじゃくっている。 ボウケンジャーを睨んだまま、洞窟に入ろうとするバジーク。 だが、銃声と同時にその足元に火花が散り、土煙が舞い上がる。 「どうも騒がしいと思ったら……やっぱりネガティブだったか!」 その声は高岡映士――ボウケンシルバーのものだった。その手にはサガスナイパーが握られている。 再びの硬直――そして最大の好機をシグナムとヴィータは見逃さなかった。 「もらった!」 「そこだ!」 シグナムがサバイブレードで、少年を掴んだ腕を斬る。同時にバジークの肩をヴィータがサバイバスターで狙い撃つ。 バジークの体液が飛び散り、少年の腕に付着する。バジークの腕は外れ、少年はシグナムによって助けられた。 だが―― 「くそっ!こうなれば……!」 バジークは背を向け、洞窟の中へと駆け込んでいく。誰も追うことはできなかった。 何故なら、助けられた少年の顔は真っ青に染まり、顔中に汗を掻いているのだ。 「どうした!大丈夫か!?」 シグナムが少年の肩を揺さぶってみても返事はなく、苦しそうに頭を振るだけだった。 「シグナム!後ろだ!」 ヴィータの声に振り向くと、ジャリュウがシグナム目掛け剣を振りかぶっている。 「くっ!」 咄嗟にサバイブレードで受け止める。ブルーもイエローも、そしてヴィータも目の前の相手に精一杯のようだった。 シルバーとブラックの二人で少年を診ている。だが、会話の全てを聞き取ることはできない。 「どうだ……映士」 「真墨……多分……しかないぜ」 「本気か?……子供を……するなんて」 「経験者……だ」 真墨はしばらく何か考えていたようだが、しばらくして叫んだ。 「全員!撤退だ!」 「ええ!?」 その言葉にブルーやイエローも振り向く。驚きの声を上げるが、少年の顔を見てすぐに理解したようだ。 「早くしろ!ヴィータとシグナム、お前らもだ!」 「プレシャスはどうするんだよ!?」 「俺は既に命令した!!」 ヴィータはまだ何か言いたそうにしていたが、しぶしぶ走り出す。シグナムとシルバーも無言で従い、ブラックも少年を担ぐとその後を追う。 ブラックやシグナムよりも洞窟から遠くにいるイエローとブルーが、カースとジャリュウに向けサバイバスターを乱射する。撤退の援護だろう。 ビームは地面に着弾し、激しく土煙を上げた。逃げるにはちょうどいい。 だが、ブラックだけは洞窟を向いたまま、動かない。まるで洞窟から何かが出てくるのを待っているかのように。 土煙の向こう――洞窟の暗闇から『それ』は現れた。 赤と緑の混ざり合ったどす黒い皮膚――邪悪竜バジークだ。 唯一違ったのは、鈍色だったはずの瞳は金色に輝き、怪しい光を放っている。 シグナムは直感的に危機を感じ、身を隠す。 バジークの視線はしばらく宙を彷徨い、ゆっくりとボウケンブラックへと向けられた。 その時、ブラックの取った行動に、シグナムは己の目を疑った。 彼は――ブラックは抱えていた少年を盾に視線を防ぎ、その陰からサバイバスターを撃ったのだ。 視線を受けた少年は手足から徐々に色を失ってゆき、やがて苦悶の表情もそのままに完全に石へと変わってしまった。 「何やってんだ!早く逃げるぞ!」 重さを増した少年を担ぎなおし、ブラックは斜面を滑り降りていく。 「何なんだよ……!危なくなったら子供を盾にして逃げるのが冒険だってのかよ!ボウケンジャーなのかよ!!」 シグナムの横を走るヴィータが叫ぶ。どうやら彼女も見ていたらしい。 その声には怒りと悔しさ――悲しさが込められていた。 「主はやて……何故あなたは我らを……」 もう幾度となく呟いた台詞――それでも思わずにはいられなかった。 聞こえなかったのか、それともヴィータもまた答えを持たないのか。 その問いに答える者はいなかった。 次回予告 「子供を盾とするのが貴様らの冒険か!」 「無能な管理局に何ができる……」 「僕は食べられませんよ~!」 「あたし達にはあたし達の戦い方がある!」 「ヴォルケンリッターが将、シグナム!参る!」 「全車、轟轟合体だ!!」 ExtraTask03 「新たなる冒険者」 おまけ はやて「それにしても……あの二人は今頃どないしてるんやろか?」 シャマル「サージェスは家からは通えませんもんねぇ。そういえば、どうしてあの二人なんですか?」 はやて「う~ん。ほら、あの二人は頑丈やし、身体を動かすのも得意やん?」 シャマル「でもそれならザフィーラでも良かったんじゃないですか?」 はやて「せやけど、ザフィーラやと色が被ってまうやんか」 シャマル「はやてちゃん……髪の色は多分関係ないんじゃないかしら……」 はやて「え……?」 シャマル「もしかして一番の理由って……それなんですか?」 はやて「…………」 戻る 目次へ 次へ